【記者座談会】広がり見せるICT活用工事 建設会社をどこまで本気にさせられるか | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【記者座談会】広がり見せるICT活用工事 建設会社をどこまで本気にさせられるか

自治体のモデル工事で、職員が監督検査を行う現場を見せることが、発注者への普及の突破口となる


A 国土交通省が2017年度を「前進の年」に位置付け、ICT(情報通信技術)活用工事の拡大に本腰を入れている。直轄の土工事では一気に拡大したが、自治体発注工事への浸透度合いはどのくらいなのか気になる。先行するICT土工はC等級工事が中心なだけに、自治体発注工事でも扱いやすいから、普及の可能性も大いにあると思う。
B 産学官のICT導入協議会でも「自治体への普及拡大」は重点テーマとして位置付けられている。協議会資料によれば16年度に13自治体で154件のICT土工が公示され、このうち実施したのは44件だった。まだまだ少ないけど、17年度に入って、徐々に自治体の受け止め方も変わってきたよ。
C 例えば東北地方では岩手、山形、福島の3県が既に試行・実施要領を策定し、発注の準備段階に入っている。青森、秋田両県も年度内の試行導入を目指しているようだ。宮城県も導入には前向きな姿勢を示しているし、一気に広がりを見せるだろう。
D 中国地方も動きが出てきた。鳥取県は17年度から工事だけでなく測量設計でも試行に乗り出す。島根県は道路土工工事3件で試行することを決めた。いずれも受注者希望型として発注されるから、ぜひとも前向きな企業に落札してもらいたい。
B 九州では鹿児島県も道路改築工事の2現場で活用を決めた。他の自治体も同様だけど、施工者にヒアリングするなど、取り組みの成果を検証する動きになっている。成功事例が出てくることが発注者にとっても推進材料になるからね。
A 国交省も自治体に対する導入支援のスキームを準備している。17年度からi-Construction(アイ・コンストラクション)普及加速事業にも取り組むが、柱の1つがICT活用の地方展開だ。選定するモデル自治体には既に静岡県と茨城県が名乗りを上げている。
D 普及加速事業は、ICT導入指導のできる者が所属する業団体と連携し、経費を支出する枠組みだ。これが動き出せば自治体も導入もしやすくなる。試行工事も増えてくるだろうから、新たな都道府県が手を挙げる可能性も十分にあるだろう。実際に職員が監督検査を行う現場を公開すれば、発注者への普及にも弾みがつくだろう。まずは自治体への解を促すことが第一だ。
C そういえば取材をしていて、自治体からはこんな懸念の声も聞こえてきた。補助事業に導入した場合に「会計検査院の検査でうまく説明できるかが心配」というのだ。確かにICTの導入で工事費は1割程度高くなるから、補助事業に導入しても良いという国からのお墨付きがなければ、指摘を受ける可能性もある。自治体にとっても良かれと思ってICTを導入しても、会計検査院の検査で不適切と判断されたら困るからね。
B 自治体への普及には発注者への支援体制も大切だけど、やはり実際に使う側の建設会社をどこまで本気にさせられるか焦点になることは間違いない。試行工事にしなくても、良いツールであれば自主的にやる。従来と違ったやり方で工事をするわけだから、費用対効果があるか否かが問われる。国交省にとっては成功体験をいかに水平展開できるが知恵の見せ所だろう。
D われわれ報道する側も、工事利益の部分まで踏み込んだICT活用の効果を紹介できるといいよね。働き方改革も同様だけど、実際に仕事のやり方変えることで、企業経営にどのような効果を生んでいるか。現場目線の記事をもっと書いていかないといけない。

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