【2027年園芸博を起爆剤に】旧上瀬谷通信施設の土地利用 見えてきたまちづくりの方向性 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【2027年園芸博を起爆剤に】旧上瀬谷通信施設の土地利用 見えてきたまちづくりの方向性

テーマパークを核とした複合集客施設や農業、公園、物流機能を備えた約242haの新たなまちづくり–。2015年6月に米軍から返還を受けた旧上瀬谷通信施設の土地利用が動き出そうとしている。「ここが横浜郊外部の活性化拠点なんだと断言できる特徴あるまちにしたい」と話す横浜市都市整備局上瀬谷整備・国際園芸博覧会推進室の曽我幸治室長にまちづくりの方向性を聞いた結果、ホテルや商業施設誘致の可能性、園芸博の全体像も見えてきた。

新たなまちづくりでは、敷地を4つのゾーン▽農業振興ゾーン▽観光・賑わいゾーン▽物流ゾーン▽公園・防災ゾーン–に分け整備する。「4つのゾーンが連携することで、土地のポテンシャルが最大化できる」と指摘。「例えば、観光・賑わいゾーンに商業施設が入るとしたら、公園との連携も考えられるかもしれない」と将来図を描く。

航空写真

テーマパーク以外の具体的な機能は決まっていない観光・賑わいゾーンについて「このエリアだけでさまざまなことができる拠点としたい」と方向性を示した上で「テーマパークを中心に、ホテル誘致の可能性もある」と言及。上瀬谷を“泊まる”“遊ぶ”拠点としながら「上瀬谷からアクセスしやすい箱根など、神奈川県内のほかのスポットにも足を運んでもらうという考え方があっても良いかもしれない」と、県全体へ波及効果をもたらす一大観光拠点としたい思いをのぞかせた。

まちづくりの第一歩として、27年3~9月には、観光・賑わいゾーンと公園・防災ゾーンの一部で、国際園芸博覧会(園芸博)の開催を目指している。園芸博の中で最も規模が大きいA1クラスでの実施を予定しており、1990年の「大阪花博」以来、国内2例目となる。

博覧会の見所について「主役は花だけではない。農や食の新技術を発表する場にもなる。SDGs(持続可能な開発目標)やSociety5.0などを取り入れ、未来が感じられる空間にもしたい」と楽しみ方の多様さを強調。園芸博で紹介する新技術が、新たなまちの農業ゾーンにも「生きてくるかもしれない」と述べるほか、園芸博のレガシーを「公園ゾーンに引き継ぎたい」と会期終了後の展開にも期待を込める。

春から夏にかけての開催となることについては「季節ごとに違った雰囲気が楽しめる場を目指す。魅力の引き出し方がかぎだ」と何度も訪れたくなるような工夫の必要性を説いた。

園芸博開催までのスケジュールは、21年3月に基本計画(市案)を策定した後、21年度に国・民間・地方公共団体(神奈川県、市)からなる博覧会協会を立ち上げる。ここで市は、基本計画(市案)を協会にバトンタッチし、国とともにBIE(博覧会国際事務局)へ認定申請する。認定承認が降りると、開催に向けた手続きが完了する。博覧会の整備工事は、開催の3年前ごろからスタートする見込みだ。その前段では、22年度から区画整理を始め、将来のまちづくりのための道路や造成に取りかかる。

AIPHプレゼン(2019.9)
グリーンインフライメージ

みなとみらい21地区の1.3倍にもなる広大な土地を活用した新たなまちづくりに向け、「地元の意見をしっかり聞きながら区画整理を着実に進める。27年の園芸博を成功裏に収め、そこを起爆剤に世界に誇れる上瀬谷というまちをつくっていきたい」と力強く語った。

これまで別個だった3つの部署が集まり、4月に上瀬谷整備・国際園芸博覧会推進室が発足した。新たなまちづくりのキーパーソンとも言える曽我室長はチームを率いる上で、“情報共有”と“助け合い”を大切にしている。対外的な交渉が非常に多いことから、「とにかく丁寧に親切に対応する」ことも心掛けている。推進室の職員にもその重要性を説く。『情けは人のためならず』–誠実な姿勢は、必ず自分のもとに帰ってくる。その信念のもと、上瀬谷の新たなまちづくりを推進する。

上瀬谷の現況写真

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(そが・こうじ)東京都立大工学部土木工学科卒。1989年横浜市入庁。2009年金沢土木事務所副所長、11年道路局鉄道交差調整担当課長、14年道路局企画課長、16年港湾局担当部長、18年道路局計画調整部長を経て、4月1日付で現職。愛媛県出身、56歳。