【深化する関西の建設ICT⑭】建設総合サービス 自治体にも情報共有システム拡大 | 建設通信新聞Digital

5月19日 日曜日

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【深化する関西の建設ICT⑭】建設総合サービス 自治体にも情報共有システム拡大

 受発注者間の情報共有システム『電納ASPer』を提供する建設総合サービス(大阪市)が着実に実績を伸ばしている。国土強靱化対策などを背景に国や地方自治体の発注工事件数が増加基調にあることが要因の1つだが、同社の市川保取締役経営事業本部長は「国土交通省が先導するBIM/CIM導入の動きが進めば、プロジェクト関係者間をつなぐ情報共有システムのニーズはさらに拡大するだろう」と先を見据えている。国土交通省がインフラ分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に乗り出し、現場のデジタル化が拡大することも追い風だ。

小川氏と市川氏


 近年、電納ASPerの利用実績は年率2-3割の伸び。近畿地方整備局や中部地方整備局の管轄では利用率が9割を超える。小川敬雄経営事業部長は「3年ほど前から地方自治体発注工事でも情報共有システム導入の動きが出てきた」と説明する。関西圏では自治体が独自システムを使う流れが一部であるものの、京都、和歌山、奈良の1府2県では受注者希望型による情報共有システムの導入を試行的に進めており、こうした流れが全国的に広がりつつある。

 国土交通省の直轄事業では2015年度から土木の発注工事で情報共有システムの利用が一般化され、受注者(施工者)にとっては発注者との情報共有に欠かせないツールとなった。18年度からは業務委託でも導入され、建設コンサルタントや測量会社などの利用もスタートした。営繕工事でも導入が進み始めたほか、農林水産省など国の発注工事でも動きが出てきた。

 直轄事業の最前線では、受注者とのコミュニケーション強化の観点から、情報共有システムの利活用に前向きな工事事務所は少なくない。小川氏は「コロナ禍で対面での打ち合わせがしにくい状況もあり、情報共有システムの中でテレビ会議のような仕掛けができないかとの要望も出ている」と明かす。特に業務委託関連の情報共有では掲示板利用が多いだけに「建設コンサルタントからの相談が増えている」という。

3次元表示も始まった


 国土交通省はBIM/CIMの原則適用を23年度に2年前倒したことで、情報共有システムの高度化も一気に進みそうだ。現在はシステム内で電子納品できるように要領の更新作業が進んでおり、この動きに合わせるように電納ASPerもオンラインによる電子納品を新機能として準備している。既に19年度にはBIM/CIMの進展を見据え、3次元表示の運用が始まっている。市川氏は「これまでデータをCDやDVDにコピーして持ち込んでいた。データの受け渡しまで一気通貫で行えるようになれば現場の手間も大幅に軽減される」と強調する。

 同社は、20年度中に電納ASPerのオンライン納品機能を開発し、国の要領更新に合わせてリリースする方針だ。小川氏は「ただ、3次元モデルや点群などデータ容量が大きい場合の対応も含め、われわれとして利用環境をしっかりと整えることも重要になってくる」と考えている。オンライン納品が実現すれば、受発注者間の打ち合わせも効率化し、時間も有効利用できる。「いずれ5Gへの移行も実現する。われわれは受発注者間のコミュニケーションツールとして使い勝手を常に重視していく」と続ける。

電納ASPerの画面


 情報共有システム導入の流れは直轄事業から、地方自治体へとステージが変わろうとしている。市川氏は「現在は都道府県への導入が進み、これから政令市、さらには市町村へと拡がってくる。現場の声に耳を傾け、より受発注者の目線からシステム構築していきたい」と力を込める。

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