【伸展する関西の建設ICT⑬】オンライン納品の対応拡大へ 建設総合サービス | 建設通信新聞Digital

5月9日 木曜日

B・C・I 未来図

【伸展する関西の建設ICT⑬】オンライン納品の対応拡大へ 建設総合サービス



建設総合サービス(大阪市)が提供する受発注間の情報共有システム『電納ASPer』の利用実績が、累計で3万件を超えた。近畿地方整備局や中部地方整備局でトップシェアを誇るなど国土交通省直轄事業での安定的な利用に加え、都道府県を中心に地方自治体発注工事にも導入が進み、近年の利用件数は年率2-3割の伸び。市川保取締役経営事業本部長は「コロナ禍で打ち合わせを制限せざるを得ない状況になり、受発注者間をつなぐ情報共有システム(ASP)の存在が改めてクローズアップされている」と明かす。


市川氏(左)と小川氏




進展する建設現場のデジタル化も情報共有システム普及の追い風にもなっている。国土交通省のi-Construction施策を背景にICT活用工事が急拡大し、BIM/CIMの原則適用も2023年度に前倒しされた。ウェブカメラを使って現場点検を行う遠隔臨場の取り組みも進展しつつあり、そうしたデジタル化の流れがASPへの相乗効果となっている。小川敬雄経営事業部長は「国がインフラ分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)を打ち出したことも大きなインパクトになっている」と強調する。

同社は電納ASPer利用者の要望を踏まえ、常にシステムの機能強化を推し進めてきた。19年度にはBIM/CIMの進展を背景に、3次元表示の運用を始めたほか、ことし4月からは新オプションとして、システム画面内でウェブ会議ができる「ASPer LIVE」機能も拡充した。業務委託関連の情報共有では掲示板利用の事例が多く、建設コンサルタントを中心にウェブ会議機能を求める声が挙がっていた。進展する遠隔臨場とASPとの親和性も高く、利用数も増えている。


ウェブ会議ができる「ASPer LIVE」




国交省が先行導入に乗り出しているオンライン納品にも万全な準備をしてきた。各地方整備局で7、8件の初弾プロジェクトが選定され、電納ASPerを使ったオンライン納品は全国で18現場に達した。従来はシステム上で工事帳票類の共有を進め、最終成果品はCD-Rで納品していた。図面類に加え、3次元モデルデータなども受け渡ししている。

先行導入した現場のオンライン納品はスムーズに進んだことで、一気通貫の情報共有環境が実現したものの、小川氏は「BIM/CIM導入プロジェクトのように大容量データ時の納品や、山岳部などデータ通信環境の悪い現場など解決すべき課題はまだある」と考えている。同社は一つひとつ課題を整理し、オンライン納品への対応を進めていく方針だ。


◆利用実績3万件超えも、まだまだ伸びしろ
利用件数で累計3万件を超えた電納ASPerだが「伸びしろはまだまだある」と、市川氏は先を見据えている。拡大基調にある地方自治体発注工事では、導入フェーズが都道府県から政令市へと移り、市町村でも導入に前向きな動きも出ている。民間工事でも利用事例が目立ち始め、裾野は着実に広がりつつある。

一方で情報共有システムのさらなる普及に向け、将来的にシステムベンダー各社がデータ互換性やインターフェースの共通化などについて、幅広い視点から議論する時期も到来しつつある。小川氏は「インフラDXが現実味を帯びてくる中で、ベンダー同士が連携し、情報共有システムを現場のプラットフォームとして確立できれば、ASP業界としてさらなる成長ができる」と考えている。


BIM/CIM背景に3次元表示機能もスタート

 

【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら