【建築のネクスト・フェーズ】ABW環境と働き方の効果とは 三井デザインテックの研究結果 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【建築のネクスト・フェーズ】ABW環境と働き方の効果とは 三井デザインテックの研究結果

 三井デザインテックは、新型コロナウイルス以後、オフィスに求められる機能・役割の変化を踏まえ、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)について、フィンランドの国立労働衛生研究所をパートナーに、東大大学院経済学研究科の稲水伸行准教授と共同で「ABWの環境と働き方がもたらす効果」の研究結果を公表した。利用者のクリエーティビティーについて、ABW環境下での利用者の属性や使い方によって、効果に差があることを指摘している。

 ABWとは、「働く人が、自分の仕事内容に合わせて移動し、執務する環境・場所を選ぶ」働き方。コロナ以前から、北欧を中心に広がりを見せ、ABW向けのオフィスが利用者の生産性や就業意欲を高めるものとして提案されてきた。

 同研究の基礎となる調査は、フィンランド国立労働衛生研究所のアンケートを元にしたウェブアンケートと、ビーコンセンサーによる位置情報アプリ「Beacapp Here Pro」で取得した行動データを用いて、2020年2月に三井不動産ビルディング本部の社員200人を対象に実施された。

 調査では、まずクリエーティビティーとワーク・エンゲージメント(就業組織に対する帰属意識や信頼関係などの、心理的結びつき)について、調査の対象者が設問に回答したデータに基づいて算定し、オフィスの利用傾向とつき合わせた。その結果、オフィスの滞在時間が長く、多くのエリアを使用している社員はクリエーティビティーが高く、ワーク・エンゲージメントが高いとの評価が出た。

 また、ABWを採用している環境で、具体的にどのような行動が効果に結びついているのかを詳しく検証したところ、特に総合職と管理職では、ほかと異なる傾向が見られた。

 総合職はオフィスの中で多くの人数と出会うことがクリエーティビティーを高めることにつながる傾向があった。管理職はオフィスに出社し滞在するだけではなく、オフィス内でさまざまなエリアを活用し、異なる組織の人と接することがクリエーティビティーの向上につながる傾向があった。

 三井デザインテックは、今後リモートワークの広がりと合わせてABWの働き方を取り入れる企業の増加を予想。一方、チームでの協業やコミュニティーの形成、多くの人や異なる組織の人と接する環境については、リモートワークが主流となったとしても、企業が適切な環境を用意することがクリエーティビティーやワーク・エンゲージメントの維持・向上につながると考察した。

 この結果を今後のワークスタイルコンサルティングとワークプレイス提案に活用する。

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