【BIM未来図】設計BIMの2020年代を考える② | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図】設計BIMの2020年代を考える②

建築情報の仕組みとして考えるBIM/IMが設計情報活用のポイント
東京大学生産技術研究所特任研究員 村井 一氏

 建築設計は、分析、総合、評価を繰り返しながらアイデアを収れんさせていく。そうした設計行為に、CAD、BIM、プログラミングなどのツールが影響を与えるのは間違いのないところだ。

 2次元CADは、設計対象を平面図、立面図、断面図など個別の図面に記述する点で手書き図面と同様だ。3次元CADは、立体的な線分、形状、プロジェクトデータから設計対象を仮想空間に構築する。平面図、立面図などを別の投影図として記述する2次元CADに比べ、形状の整合性などをシームレスに確認できるのが特徴だ。

 BIMは、立体形状を入力する意味で3次元CADと同じだが、柱、床、壁、部屋などオブジェクト単位で入力する属性情報のデータベースとなる。形状データを投影・切断し整合性の高い図面を作成するのはもちろんのこと、数値や仕上げなどさまざまな属性情報をオブジェクトに付与する。それらを集計し、部屋面積や仕上げ表などのリストを作成することができる。

 VPLは、視覚的なオブジェクトの配置により構成するプログラミング言語の総称で、「Grasshopper」や「Dynamo」が近年活用されている。

 私の所属する東京大学生産技術研究所の「RC-90つなぐBIM研究会」では、BIMの概念を捉えやすくするため、「BM(Building Modeling)」「BI(Building Information)」「IM(Information Modeling)」という3つの概念に分類し、建築情報の仕組みを定義している。

 「BM」は形状情報であり、建築物や構成要素を仮想空間に構築する行為となる。「BI」は建築物の構成要素にひもづく性能、仕様、寸法などの属性情報。「IM」は入力した情報や参照する情報のひもづけなど、ルールを設定する行為だ。集計表や面積表を作成する際、データを拾い出すルール付けを行うが、そうした行為を指す。

 研究会では、これら概念の具体例として駒場リサーチキャンパスの実験住宅のBIMデータを作成した。最初にBMとして全体の形状を作成し、その構成材である壁やサッシなどにBIとして属性情報を付与した状態にした。それらの情報を集計して設備表を作成するのがIMとなる。

 特にBIMのキモになるのがこのIMだ。集計など建築情報を扱う行為に対し、どう定義するかがコツであり、さまざまな価値につながる。

 例えば大学キャンパスでは、空間構成を示す程度の抽象的なBIMモデルを利用し、詳細なBIMデータがなくても部屋情報を起点に図面や管理情報をひもづければ、さまざまな連携が可能になり、キャンパスマップやマスタープランの検討に有効になる。複数の建物を抱える企業や自治体単位でも空間マネジメントやFMにつながるだろう。

 むしろそうした利活用こそ、IMの役割ということができる。使いたい要件に合わせて情報を組み立て、データを上手に利活用する技術が今後ますます重要になる。

BIM=BM/BI/IM 建築情報の仕組みを支える3つの概念としてBIMを支える



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