【BIM未来図】設計BIMの2020年代を考える③ | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【BIM未来図】設計BIMの2020年代を考える③

「寄り添うBIM」と「変えるBIM」/データのあり方、仕事分担の再整理を
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 清家剛氏

 果たしてBIMは設計者にとって有効な手段となり得るのか。この視点でいくつかの提案をしたい。

 BIMの導入については国土交通省の建築BIM推進会議を軸に議論が進んでいる。設計、施工と段階ごとに区切るのではなく、ライフサイクルを通してどのように活用していくかが焦点となっている。しかし、これらの議論は「建築産業を変える」ということを前提としており、その方向性や度合いについては曖昧なままである。

 さらに、ここには設計にとっていくつかの視点が抜けていることを指摘したい。

 まずは現状の仕事の変化を容認できるかどうか。立場の違いで、BIM導入に対する恩恵の捉え方が変わる。

 従来の仕事の補助的な道具としてBIMを導入(寄り添うBIM)すれば体制の変化は少ないが、設計の段階で多くを決めるフロントローディングに移行(変えるBIM)すれば契約方式まで変更を余儀なくされる恐れがある。現在の議論では変えるBIMが理想とされているが、一方向に絞るのではなく、どちらの立場も尊重しつつ議論を進めることが重要だ。

 そのためには、データのあり方と役割や仕事の分担、部品データの詳細度など、各場面でのあり方を再整理する必要がある。 例えば、設計段階では詳細なデータが必要な一方、維持管理では詳細度は設計ほど重視しない。BIMが使用される場面を共有しながら議論を進めることが求められている。

 また、見落とされがちなのが部品メーカーとの連携と部品接合部の設計だ。現状の議論では、企画、設計、施工、維持管理と、大きな流れの中でメリットを検討しているが、設計・施工は当然部品メーカーとも連携する。しかしこの場面でのBIMの活用方針については議論されていない。BIMの活用により特殊な部品が必要となったときには、接合部設計の責任所在も問題となる。

 これらの状況を総合すると、設計手順の変更まで検討の幅を広げなければならなくなる。これまで通り寄り添うBIMなら段階を経るごとに詳細を詰める従来のスタイルを踏襲するが、変えるBIMに移行するなら施工のあり方の変化にも言及しなければならない。また、 設計の負担が大きくなれば報酬体系の変化も検討する必要もある。

 改めて設計のBIMを考えたとき、現在の体制の変化を求める導入ならば検討すべき課題は多い。設計から維持管理まで一貫した情報伝達を前提に議論しているが、より細分化した議論が必要となる。

ライフサイクルで議論されていること (設計者・施工者と部品メーカーの関係)



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