【BIM未来図】設計BIMの2020年代を考える⑥ | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【BIM未来図】設計BIMの2020年代を考える⑥

模型特有の創造力の余地を残すべき
藤井亮介建築研究所代表 藤井亮介氏

 BIMの理想は、関係各社が連携してデータを利活用することで企画/設計/施工/管理のフェーズをシームレスにつないでいくことにあるが、現実問題としてBIM導入はまだまだ整備が遅れている。

 特に小規模プロジェクトに関わる関係各社は設計も含めBIM未導入のところが多いが、むしろ小規模事務所だからこそBIM活用で得られるメリットも多く、BIM導入の過渡期においては既存の情報共有システム(レガシー)との関係からBIMを捉えなおすことが重要だと考えている。

 BIMを従来の図面として書き出す機能は、ほとんどのソフトウェアに備わっており、BIMとレガシーをつなぐ最たる例でもあるが、ここではもう一歩踏み込んだ活用法を考えたい。例えば、BIMでフルモデリングをせず、 残した部分を手書きで埋めることで、従来の模型特有の創造力の余地を残すようにしたり、モデルデータの変遷を蓄積することで思考のプロセスを議事録的に記録するなど、レガシーシステム的なBIMのあり方である。このような活用法によって、BIM未導入の関係各社と情報の外部化と共有を図るのが理想的ではないだろうか。

JINS東武池袋店
設計:藤井亮介建築研究所



これまでと異なる創造性を生むこと重要
浜田晶則建築設計事務所代表 浜田晶則氏

 私の取り組みとしてまず紹介するのは、東京・渋谷の宮下パーク2階のベーカリーのテラスに設置した「Torinosu」という作品。自然に曲がった木の造形の美しさをいかして構築物にしたプロジェクトで、木を3Dスキャンし、ARグラスを装着した職人にカットラインなどを指示するAR(拡張現実)を使い、施工に取り組んだ。

 6本の曲がった木が互いに支え合うレシプロカル構造のように計画しているが、これらをどう組み合わせ、どこにボルトを入れて構造的に成立させられるかなどを検討しながら進めてきた。

 また、神奈川県綾瀬市の基板工場のプロジェクトでは、工場と住宅が近接する地域のため、工場と住宅のあいだのようなスケールで、間取り変更などに対応できる自由度・可変性の高い建築物にしようと考え、立体トラスを利用して小さな部材で全体を構成した。

 当時、建築プロジェクトが初めてだったため、経験をコンピュテーションでカバーしようと考えてBIMを活用し、3次元で部材やビスの位置まで精密につくり込み、全体のマスターモデルをもとに照度計算や構造解析、環境シミュレーションなどを行った。BIMで設計を進める手続きを経ることで、創造性が縛られず、これまでとは異なる創造性を積極的に生むことが重要ではないかと考えている。

東京・渋谷の宮下パーク2階のベーカリーのテラスに設置した作品



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