【BIM/CIM2021①】インフラDXを先導全面適用へ準備加速 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM2021①】インフラDXを先導全面適用へ準備加速


 国土交通省は、直轄工事におけるBIM/CIM原則化に舵を切り、2023年度の全面適用に向けた準備を加速している。その先には、あらゆるデータや最新技術を活用したインフラ分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を見据える。受発注者が建設生産サイクルを一気通貫してデータ連携するための仕組みづくりを急ぐとともに、段階的に原則化の適用範囲を広げ、23年度の小規模を除く工事での全面的な活用につなげる。また建設企業の導入も強力に後押しし、業界一丸となって生産性向上を推進していく。インフラDXを先導するBIM/CIMの最前線を紹介する。

デジタル化で誇り持ち働ける建設産業へ/国土交通省 東川直正大臣官房技術審議官に聞く

――BIM/CIMのこれまでの取り組みは
 「2016年にi-Constructionを開始し、調査・測量、設計、施工、維持管理に3次元データの活用を進めてきた。工事では、毎年約1万件発注するうちの約2000件でICT施工を行っている。これは土工工事が中心となっている」
 「一方、BIM/CIMは、土工よりも詳細なデータを扱う構造物に適用している。例えばコンクリート橋は、形状だけでなく、中身の鉄筋1本ずつに属性情報をもたせ、どの鉄筋が何本あるかまでデータ化する。i-Conで一気に広まったICT施工に比べて複雑な情報を扱うため、19年度までに実施した件数は合計で約1000件にとどまる(うち工事は約450件で実施)」
 「ただ、国土交通省は20年度からデジタルトランスフォーメーション(DX)をあらゆる分野で進めているため、BIM/CIMをさらに加速させ、23年度に原則義務化する方針を打ち出した」

――23年度に向けて原則化をどのように先導するか
 「20年度は大規模な橋梁や一般土木に適用したが、21年度は大規模プロジェクトの詳細設計に原則適用し、22年度は大規模工事すべてを原則化する予定だ。小規模工事を含め、直轄工事全体で原則化するには、基準や要領などのルールを整備しておく必要がある。そのため、現在BIM/CIMガイドラインの策定作業を進めている。そして調査・測量から維持管理までをBIM/CIMで進めるには国交省内部、建設業界と“合意形成”を進める必要があるだろう。まずは官側が急いでルールを策定し、周知しなければならない」
 「国交省では現在、契約や検査を2次元図面で行っているが、3次元に対応する新しい基準を作成し、すべての職員に理解させなければならない。国土技術政策総合研究所、土木研究所などもフル活用して研修を行う。部署横断でBIM/CIM教育を進める新組織も立ち上げる」

――原則化に向けて力を入れていることは
 「i-Conを開始したときもそうだったが、事業を進めながら国交省職員の教育などを行った。業界側も、建設業協会などが会員向けの研修の実施、支援組織の設置などの対応をしてくれた」
 「ただコロナ禍でデジタル化が加速し、これまで以上に早い対応が求められている。速やかにBIM/CIMのテキストを作成し、整備局の人材育成センターで国交省の技術部隊に実務的な体験型研修を受けてもらう予定だ」
 「なによりBIM/CIMに取り組めば企業に利益が出ることが大切になる。安心して設備投資できるよう、適切に積算することが重要だ。高い利潤を得ることが社員研修にもつながる」

――BIM/CIM導入で得られるメリットは
 「例えば図面をつくり時間をかけて数量を拾っても間違いや変更があれば一からやり直さなければならないが、BIM/CIMにより自動的に数量算出ができればそのような手間は発生しない。また平面図面だけで理解するのは難しいが、3次元は素人でもイメージしやすい。現実空間をコンピューターに再現するデジタルツインにより仮設計画などをシミュレーションするなどメリットはたくさんある」
 「デジタル化により建設産業全体のレベルを上げ、技術者、技能者の処遇を良くし、誇りを持って働ける産業にすることがなにより重要な目的だ」



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら