【記者座談会】流域治水プロジェクト/20年度建設業倒産 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【記者座談会】流域治水プロジェクト/20年度建設業倒産

A 国土交通省が3月末、全国に109ある1級河川水系の流域治水プロジェクトを公表し、2019年の東日本台風を踏まえて練り上げた新たな政策の流域治水が始動した。

B 流域治水は、国や地方自治体、住民、企業など流域のあらゆる関係者が、▽氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策▽被害対象を減少させるための対策▽被害の軽減、早期復旧・復興のための対策–を総合的・多層的に進める政策となる。

C 流域治水プロジェクトの特徴の1つは、治水とまちづくりの連携にある。例えば、埼玉県と東京都を流れる荒川水系は、水害時にゼロメートル地帯の住民が安全に避難できるように都が中心となって高台まちづくりを進める。水災害リスクを踏まえた立地適正化計画の見直しや、防災集団移転促進事業を盛り込んだ水系もある。

A この流域治水について土木学会が9日に推進に関する声明を発表したね。

D 能力が不足する治水施設の整備を加速しつつ、各ステークホルダーが流域の課題認識を共有するツールとして、降雨量のレベルに応じた河川氾濫(はんらん)の範囲を示す「多段階リスク明示型浸水想定図」の作成・活用を国などに求めている。それらに必要な土木技術の開発・実装に土木学会が取り組む姿勢を示した。

A その浸水想定図を作成すると、どう変わるの。

C 多段階リスク明示型浸水想定図があれば、現況の河川整備水準を踏まえた場所ごとの危険度が明確になる。住民が居住地のリスクを適切に把握できることから、土地利用計画や住まい方の変化を促すことにつながるとしている。

B 水災害リスクが高い場所から安全なエリアに移転するなど、リスクを踏まえた行動を取れるようになる。河川管理者には、地域の気象水文情報や河川整備状況など、住民が行動を適切に判断するための情報を分かりやすく提供することが求められるね。

全国各地で気候変動による洪水の可能性が高まっている。大河川や都市部の内水氾らん対応は進むが、全国2万河川の浸水想定含めたリスク分析はできていない。今回、土木学会が流域治水推進へ向け公表した提言の大きなかぎも、「多段階リスク明示型浸水想定図」普及にある

◆過去最少も「後継者難」倒産は増加の傾向

A 話しは変わるが、20年度の企業倒産状況がまとまった。建設業の倒産は。

E 帝国データバンクの建設業倒産では、前年度比19.6%減の1167件で、18年度の1375件を大きく下回り過去最少を更新した。災害復旧工事や国土強靱化対応などの公共工事需要に支えられたと分析している。3つの業種分類でみると、総合工事業は3割近く減り、職別工事業と設備工事業が15%弱の減少だった。件数ベースでは職別工事業が516件と45%程度を占める。

F 東京商工リサーチによる建設業倒産は、過去30年間で最少となる24.9%減の1117件となった。負債総額、平均負債額とも最少額で、倒産の小規模化がさらに進んだ。この小規模化を象徴するように、負債額1000万円未満の倒産件数が2割増の616件と初めて600件台となり、過去最多となった。うち建設業は1割増の90件あった。

G 建設業は当初、コロナ禍の影響が少ないとみられていたが、20年2月以降の新型コロナ関連倒産の累計件数は113件と100件を超えた。工事計画見直しなどの影響を受け破たんした。件数ベースでは飲食業に次いで多い。

E 建設業全体でみれば倒産件数は減少傾向だが「後継者難」による建設業の倒産は、15.3%増の75件あり主な産業別で最も多かった。中小建設企業の多くは地域の守り手でもある。後継者問題は深刻化し、事業承継や後継者育成は待ったなしだ。地域の建設企業が将来にわたり存続できるかの分岐点といっても過言ではない状況になりつつあるのだろう。



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