【JIA新人賞】"生きた都市遺構"を保存・再生するためには? 受賞者の魚谷繁礼氏が講演 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【JIA新人賞】”生きた都市遺構”を保存・再生するためには? 受賞者の魚谷繁礼氏が講演

 日本建築家協会東北支部宮城地域会(JIA宮城、早坂陽地域会長)は、JIA新人賞受賞講演会をオンライン形式で開いた。『コンテナ町家』で2021年度JIA新人賞を受賞した魚谷繁礼氏(魚谷繁礼建築研究所代表、京都工芸繊維大特任教授)が「歴史都市で建築する」と題して、京都の伝統的町家・長屋や路地を“生きた都市遺構”として保存・再生する取り組みを紹介した。

 京大大学院で平安京に端を発する京都市旧市街地のグリッドを研究した魚谷氏だが、事務所開設当初は「町家の改修にはそれほど関心がなかった」と振り返る。その一方、周囲の町家が次々と解体され、独特の景観・建築文化が急速に失われつつある中、「歴史的・文化的価値がそれほどない町家・長屋でも市街地の形成過程を示す都市遺構として、まずは残すことが景観を守ることにつながると考えた」という。その結果「復元ではなく、早く・安く・たくさん残すための手段」として、これまで約100件の町家・長屋を宿泊施設や店舗などにリノベーションしてきた。

 「用途の検討を含む企画段階から関わることで建物を残せた」という『コンテナ町家』を始め、地域に残された町家の多くは1950年の建築基準法施行以前に建てられた既存不適格建築だ。そのため改修時には現行基準の適合を免れるものの「建築家と施主の関係の中で責任を持って安全性を考え、構造の健全化は最重視する必要がある」と指摘。改修で用途を変更した町家・長屋なども「将来は住宅に再転用できる設計を心掛けている」という。

 京都の旧市街地については「もともと細かく分筆された路地奥の再建築不可能な安い土地が合筆され、マンションの建設が進んでいる」と現状を説明する。こうした中で路地奥にある老朽化した町家・長屋をリノベーションする取り組みは「建物に加えて、路地を含めた地割の保全につながり、マンション建設を抑制する効果もある」と強調。その上で「まちなかに安く居住するモデルをつくり続けたい」と今後の展望を語った。



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