【記者座談会】3度目の緊急事態宣言/ストアス高騰 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【記者座談会】3度目の緊急事態宣言/ストアス高騰

A 3度目となる緊急事態宣言が出された。今回は、東京都と大阪府、京都府、兵庫県の4都府県で、25日から5月11日までだ。

B 前回の宣言が解除された段階で、すでに感染者数は下げ止まっており、いずれすぐにまた宣言が出される状況になるとみんな予想していたのではないか。業界も今回は想定の範囲内という感じだね。前回の宣言の時もそうだったけれど、各社とも新型コロナウイルス感染症対策にこなれてきて、特に混乱もなく冷静に受け止めている。

C 建設現場とオフィスでの検温と手指の消毒、ソーシャルディスタンスの確保、会議時のパーテーションの設置などももはや常態化している。リモートで開催すべき会議と対面で開催すべき会合といった仕分けも徐々に見えてきているし、在宅勤務や時差出勤も定着してきた。コロナ禍でも、会食は禁止だが、経済活動は継続することが当たり前になっている。取材でも、対面取材が中止になる事例が数件みられるけれど、1回目、2回目の時ほどではなく、感染対策を実施した上で対面開催という企業も多い。

D 建設業界にとっては、民間建設投資の計画がずれ込んでいるという影響はあるけれど、ホテルや飲食、観光などの企業も含め、事業者側の関心はすでにコロナワクチンがいつ普及して、人の移動がいつごろに解禁されるかという見極めに関心が移っている。来年度には人の移動もできるようになっているだろうという見通しのもと、ホテルなどの建設投資も動き出しているようだ。このため、ゼネコンや建材メーカーの担当者に聞くと、2023年度と24年度には再び建設需要のピークが来るという予想がほとんどだ。前期に無理な受注をしたゼネコンがあるとすれば、せっかくの繁忙期に苦い思いをするかも知れない。

アスファルト合材工場は災害時の応急復旧拠点になるという地域貢献の面でも存在意義は大きい

◆安定的供給体制の検討契機に

A ストレートアスファルト(ストアス)の急激な価格上昇が、中小のアスファルト合材製造工場の経営に大きな打撃を与えているね。その要因は何かな。

E 石油精製に伴う減圧蒸留時の減圧残油を製品化するというストアスの特性が関係している。減圧残油は燃料油が大半を占める石油精製の過程で発生するもので、燃料油の利用減少に伴って石油精製が落ち込めば、ストアスの製造量、価格にも波及していく。

F 今回の価格上昇は、主な輸入国である韓国がコロナ禍による燃料油の世界的な需要減を受け、ストアスの生産量を落としたことや、販売価格差から輸出先を日本から中国に切り替えたことなどが背景にある。国内輸送事業者のロータリー車の削減、慢性的な運転手不足に伴う石油製品の輸送費変動も影響している。

E ストアスの価格は20年7月からことし3月までの9カ月で2万円も値上がりした。競争が激しい地域の合材工場は価格上昇分を合材価格に転嫁できず、コスト増加分を吸収している。実際、一部地域のアスファルト合材協会連絡協議会ではこのことが懸案事項に挙がっている。

F 合材工場のある経営者は「工場を統廃合していく契機なのかもしれない」と自嘲気味に話すが、工場稼働は地元の雇用確保に寄与するほか、アスファルトの安定供給を通じ自然災害で被災した道路の応急復旧(舗装)を下支えする。地域貢献の観点でも工場存続の意義は大きい。

G カーボンニュートラルに向けたCO2の排出抑制の動きが燃料油の使用削減を加速させる可能性をはらんでいるだけに、石油元売りや石油製品の輸送事業者など関係者が一丸となって、ストアスの安定的な供給体制を検討する必要がありそうだね。



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