【150年前の高輪築堤が出土】港区で進む"品川開発プロジェクト"が目指すまちづくりの姿とは | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【150年前の高輪築堤が出土】港区で進む”品川開発プロジェクト”が目指すまちづくりの姿とは

 JR東日本が東京都港区で計画を進めている品川開発プロジェクトのエリア内で、約150年前に構築された高輪築堤が出土した。「日本の近代化土木遺産を象徴する遺跡として、重要な位置を占めている」と評される築堤を巡り、考古学・鉄道史などの有識者で構成された高輪築堤調査・保存等検討委員会で調査・保存のあり方を議論・検討し、同社は一部を保存する方針を固めた。まちづくりと築堤保存を両立し、「新しいまちの価値向上」を目指す。

 高輪築堤は、明治初期に鉄道を敷設するため海上に構築された構造物。2019年4月に実施した品川駅改良工事で石積みの一部が見つかり、11月に実施した山手線と京浜東北線の線路切換工事以降、レールなどを撤去した結果、今回の出土へと至った。

 高輪築堤調査・保存等検討委員会を20年7月から計7回開き、調査・保存方針を取りまとめた。委員会は築堤の文化財的価値について、「橋梁部は、明治時代の錦絵に描かれた当時の風景をそのまま残しており、西洋と日本の技術を融合して造られたものと捉えることができる」「信号機土台部を含む前後の築堤は、鉄道らしい景観を表している」と評価した。

現在の橋梁部


 委員会での取りまとめを受けJR東日本は、現地保存や公開、移築への詳細な検討を進める。3街区で出土した橋梁部を含む約80mについては現地保存し、建設当時の風景をそのまま感じられるように公開する。2街区の残存状況が良好な公園隣接部約40mは、文化の発信拠点である文化創造施設と一体的に公開する。4街区では信号機土台部を含む約30mについて、JR高輪ゲートウェイ駅前の国道15号沿いの広場への移築を有力として、検討を進める。

現在の公園隣接部


 保存にあたり、300億~400億円をかけて設計を変更。具体的には、築堤の現地保存に必要な空間を確保するため、3街区建物位置を東側(線路側)に移動する。計画している歩行者ネットワークの形状も変更。築堤保存個所周辺の歩道上空地を取りやめる。

現在の信号機土台部


 1-4街区の約700mを対象に記録保存調査を実施する。港区教育委員会と連携して、考古学・鉄道史・土木史などの知見に基づいた調査を進める。築堤から取り外した石や杭を計測・記録するほか、築堤内部の土層の状況も調査・記録する。

 武井雅昭港区長は「高輪築堤跡は、国内初の鉄道開業時の歴史や技術を伝える貴重な遺構だ。魅力的な国際交流拠点として発展することを期待し、区としても協力していく」とコメントした。浦田幹男港区教育長は「現地保存とした部分以外の遺構は、詳細かつ慎重な記録保存調査を行い、調査の成果を表したい」と述べた。

 最新技術を活用した当時の築堤の景観を体験できる展示や、連続的に築堤位置を感じられる工夫をすることで、築堤の価値を次世代に継承し、地域の歴史価値向上と地域社会への貢献を目指す。周辺地域を含めた歴史・地域文化を学べるプログラムの実施を検討する。

 品川開発プロジェクト(第I期)は、JR高輪ゲートウェイ駅前に、文化・ビジネスの育成・交流・発信機能や、外国人にも対応した居住・滞在機能などを導入する総延べ約85万㎡のまちづくり事業。24年度のまちびらきを予定している。



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