【記者座談会】2021年3月期決算が出そろう | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【記者座談会】2021年3月期決算が出そろう

A 2021年3月期の大手・準大手ゼネコン26社の決算が出そろった。状況は。

B 26社中16社が売り上げ、営業利益、経常利益、純利益の全項目で前期を下回るなど、数値上は非常に厳しい結果となった。コロナ禍による影響ということが取り上げられがちだが、売り上げは21年3月期以前の受注の結果なので、もともと東京五輪関連工事が終わって需要が一服し、業績上もいったん落ち着くとみられていたから、各社とも減収減益は想定どおりだろう。コロナ禍の影響を過大に見積もった面も否めないが、通期予想を下回った企業は多くない。ただ、受注も14社が前期を下回ったという点ではコロナ禍による計画の延期・中止の影響がなかったとは言えない。

C それよりもやはり完成工事総利益(粗利)率の低下が気になる。粗利だけで利益の状況は分からないけれど、「需要減退による競争の激化の影響で受注時利益が低下している」ことは各社が認めている。この結果が今期や来期の業績にまで影響しなければ良いが。

D 22年3月期の建築の粗利は13社が前期比減という予想で、ほとんどの企業が2桁を割り込む。問題はこのまま粗利がまた低下し続けるのかということだ。

B 16社は22年3月期の受注見通しを前期比増に設定した。延期していた案件が動き出し、コロナ禍でむしろ活性化した物流やデータセンターの旺盛な建築需要も継続する中で、市場は底堅いと見ている企業が多い。土木は国土強靱化などによってもともと堅調だ。海外は22年3月期に発注活動が回復するという見方と、まだ厳しいという見方に分かれているものの、21年3月期よりは改善するだろう。需要が回復して競争が緩和され、また粗利が回復すれば良いけれど。

コロナ禍で活性化した物流やデータセンターの旺盛な建築需要も継続する中で、市場は底堅いと見ている企業は多い

◆情報通信設備はデジタル化加速

A 設備工事会社はどうか。

E 電気設備工事大手5社の個別は、3社が減収営業減益、2社が減収営業増益だった。新型コロナによって、民間建設投資計画案件の延期・凍結の影響に加え、電力設備投資の圧縮基調の継続もあり、事業環境は厳しく、受注高は4社が減少した。空調設備工事上場大手6社は、5社が減収減益となった。リニューアル工事や小規模工事の中止、延期などが響き、売上高が減った形だ。

F 情報通信設備工事は、3社とも増収増益になった。新型コロナで社会のデジタル化が加速し、5G(第5世代移動通信システム)基地局の整備などに加え、防災・減災などの社会インフラ投資が進んだことから、建設産業の中ではコロナ禍が結果として追い風になった業種だろう。

A 道路舗装大手8社の状況は。

G 過半数の5社が増収となり、営業利益も7社で増益だった。増益の要因には、アスファルトの価格が20年3月期よりも安値で推移したことなどが挙げられている。ただ、アスファルト価格はことしに入ってから上昇傾向にあり、22年3月期については厳しい予想を立てている企業が目立つ。受注高は8社中6社が21年3月期を上回った。コロナ禍で民間工事の受注減が想定されたことから官庁工事の受注活動を強化したとしている企業は複数あり、その結果例年並み、中には民間も想定より確保できたため前年より受注を伸ばせたという声もある。

A 建機メーカー大手4社の動向は。

H 世界的なコロナ禍の影響により20年度上期までを中心として需要が減退し、全社が減収となった。本格的な需要回復は、今年度以降を見込む企業が多い。



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