【記者座談会】熱海の大規模土石流/がんばろう!東北 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【記者座談会】熱海の大規模土石流/がんばろう!東北

 静岡県熱海市伊豆山地区で3日、大雨による大規模な土石流が発生した。

 ここ数年は梅雨の時期に毎年、豪雨災害が発生している。山陰沖から近畿、東海に延びる梅雨前線の影響で、7日には島根、鳥取両県を中心に中国や近畿、東海地方が大雨に見舞われた。島根県東部や鳥取県中・西部では線状降水帯が発生し、島根県では土砂崩れなどの被害が起きている。引き続き、予断を許さない状況が続く。

 熱海では土砂崩落の起点で実施された盛り土が災害発生の引き金になったとの指摘もある。静岡県の難波喬司副知事は7日の会見で「工法が不適切だったと思う」とし、排水などの設備が不十分だった可能性があると指摘した。盛り土にはプラスチック片などの廃棄物が含まれており、現場の過去の写真を調査した結果、必要な砂防ダムや排水溝などが存在しなかった可能性があるという。

 赤羽一嘉国土交通相は6日の閣議後会見で、熱海市の土石流に関連し、農林水産省や環境省などの関係省庁と、全国的な盛り土の総点検を検討する考えを示した。土砂災害と盛り土の因果関係は今後の詳細な調査の結果を待つ必要があるが、結論次第では今後の造成のあり方に大きな影響を及ぼす可能性もある。土砂災害警戒区域は全国で約66万カ所が指定されている。気候変動に伴って毎年のように記録的豪雨が発生する中、土砂災害の発生リスクを低減するためにも、早急な対策が求められている。



6日に福島市内で開かれた「がんばろう!東北」。約200人が「次の東北」へ前進するため、決意を新たにした



将来世代のための支出を惜しむな


 話は変わるけど、6日に福島市で東北経済連合会や東北建設業協会連合会など、東北・北海道地区の経済・建設関係5団体で組織する「東北の社会資本整備を考える会」がフォーラム「がんばろう!東北」を開いたね。

 東日本大震災から10年が過ぎ、被災地の復興も新たなステージに入る中で、復興関連予算の継続的確保など7項目の決議を採択し、約200人の参加者と関係者が「次の東北」へ前進するために決意を新たにした。

 復旧・復興事業は道路、河川、港湾といった基幹インフラがおおむね完成し、国が進める復興道路・復興支援道路の21年内の全線開通に向けて整備が進められている。とはいえ、福島復興再生拠点や復興まちづくりの整備、風評被害の払拭(ふっしょく)や、中小企業を始めとする企業の経営再建など多くの課題が残されており、東北の復興はまだ道半ばの状況にある。

 フォーラムでは復興関連予算の継続的確保、気候変動によって激甚化・頻発化する気象災害や大規模地震の予防保全のための安定的・継続的な予算確保などを盛り込んだ決議を採択した。来賓あいさつで稲田雅裕東北地方整備局長は、熱海での土石流発生に触れた上で、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の着実な実施に向けた関係者の協力を呼び掛けた。ポストコロナを見越し、地域の産業、観光を元気づけるためにも着実な社会資本整備の必要性を訴えた。

 基調講演では、評論家の中野剛志氏が財政赤字の拡大は将来世代にツケを残すことにはならないことを分かりやすく説明した。むしろ、「将来世代のための支出を惜しむことこそが、無責任な行為」であるとし、日本の公共事業予算に影響を与えている健全財政論から「機能的財政論」への転換を呼びかけた。

 気象災害やいつ起きてもおかしくない大地震に備え、強靱な国土を次世代につなぐためにも社会資本整備に必要な予算をケチってはならないということだね。



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