【記者座談会】大手・準大手ゼネコン1Q決算/日本広域に予断許さぬ記録的大雨 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【記者座談会】大手・準大手ゼネコン1Q決算/日本広域に予断許さぬ記録的大雨

 大手・準大手ゼネコン26社の2022年3月期第1四半期決算がまとまった。

 総じて見れば、手持ち工事の消化が進み売り上げは増加したものの、利益率は下がっているという感じだ。特に大手は、4社同士がコロナ禍以前からしのぎを削ってきた超大型物件で、完成工事総利益(粗利)率が低下し、営業減益となった。粗利率が2桁を超えたのは鹿島だけ。4社とも、以前からの激しい競争の結果が表れたという認識で一致している。

 準大手も減益が目立った。コロナ禍の需要減退で競争が激化し、粗利率が低下したと見るのは簡単だが、やはり個社ごとに事情は違うようだ。営業赤字となった東急建設は単体の土木の粗利率がマイナスとなり、同じ営業赤字のナカノフドー建設は海外の損失が響いている。

 一方で、戸田建設や奥村組、ピーエス三菱は営業利益が前年同期比で倍増以上と好調だ。売上高の増加に伴う営業利益高の上昇というわけではなさそうで、この3社は粗利率も一定水準を維持している。工事が進捗しにくい第1四半期だし、個別案件の状況によっても変わってくるので、“勝ち組”“負け組”とは言えないが、利益面で明暗が分かれたのは明らかだ。

 今後は粗利率の低下に加え、海外が不安要因となる。新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大によって、東南アジアの工事が6月以降、止まっているからだ。ある大手ゼネコンでは、タイとベトナムの工事が止まっていると言う。前年同期の海外の業績がコロナ禍の影響で非常に悪かったため第1四半期は各社とも海外事業が増収になった。しかし、ここ数年の海外進出の中心地である両国で工事が再び止まると、第2四半期以降は業績に影響が出るかも知れない。

◆有事で存在感増す地域建設業

六角川の氾濫で武雄市内が浸水 (写真提供:国土交通省九州地方整備局)

 話は変わるが、西日本を中心に11日から日本広域で記録的大雨に見舞われ、予断を許さない状況が続いている。被害状況はどうだ。

 国土交通省の発表では、国管理の六角川、江の川を始め、都道府県管理の河川でも氾濫を確認済み。長崎県や広島県、佐賀県などでは土砂災害が発生した。道路では中国道と浜田道の一部が通行止めとなったほか、直轄国道や補助国道、都道府県道で土砂崩れや法面崩落、路面冠水などが起きている。

 発災を受けて、国交省の対応は早かったよ。被災地域支援のため、TEC‐FORCE(緊急災害対策派遣隊)を広島県や佐賀県などに派遣し、六角川周辺では排水ポンプ車を投入して排水作業に乗り出したね。

 地元自治体などの行政機関は「空振りを恐れずに」避難指示を出し、住民の避難行動を促している。これも被害低減につながっている。近年の水災害の教訓が生かされていると言える。

 継続的に実施してきた防災・減災、国土強靱化対策の貢献度も大きい。自然災害が多発・激甚化している現状を踏まえると、今後もソフト・ハード両輪での取り組みが不可欠だ。

 地域の守り手である地域建設業の動きは。

 個社単位では土砂撤去などを進めているようだが、幸いにも公共施設が大きな被害を受けていないため、地方建設業協会は施設管理者(行政機関)から災害協定に基づく活動要請を受けていないようだ。

 ただ、事態の悪化や冠水の解消などを見据え、各協会とも情報収集や応急復旧体制の構築に余念がない。そうした姿勢からも、有事で地域建設業の重要性が増していることを実感するよ。



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