【VRで火災訓練】臨場感あり実践的 森ビルが開発 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【VRで火災訓練】臨場感あり実践的 森ビルが開発

VR上での消火活動の様子。現実世界では難しいリアルな訓練が可能


 森ビルは、虎ノ門ヒルズビジネスタワーを舞台に、最新のVR(仮想現実)技術を使った「火災時初動訓練VRシミュレーター」を独自開発した。現実の世界では体験しづらい臨場感のある初動訓練をいつでも、どこからでも、何度でも仮想空間で実施できる。コロナ禍で人流抑制などの制約を受ける中、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用してより実践的な訓練を提供し、安全・安心な都市の実現を支える。

 同社は「逃げ出す街から逃げ込める街へ」をコンセプトに、長年にわたりさまざまな取り組みを展開している。その一環として火災発生時の初動訓練を定期的に行ってきたが、稼働中のオフィスやレジデンスで火災現場を忠実に再現することは不可能で、大規模で本格的な訓練実施には限界があった。この課題を解決するため、理経(東京都新宿区)にVR制作を依頼し、森ビル独自のシミュレーターを開発した。

 訓練者は仮想空間内で火災報知器を鳴らしたり、ビル内を移動しながら燃え上がる炎の消火活動を体験できる。実験段階ではあるが、扉に触れた際の熱を疑似的に感じられる「感熱デバイス」の導入も検討している。

 それぞれの判断・行動に対する採点機能も搭載した。担当者の主観によらない客観的な採点結果に沿って、効率的なスキル向上が期待できるという。

 今後、自社物件の管理・運営を担う現場社員や設備・警備などの協力会社スタッフを対象に、VRシミュレーターによる初動訓練を順次始める。いずれは完成前の物件にも適用し、現地入りの前から備えられるようにする。

 VRシミュレーターは管理者向けだが、森ビルは来街者やテナント向けの避難訓練シミュレーターの実証も進めている。国土交通省が推進する3次元(3D)都市モデル整備・利活用プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」と連携し、「3密」を回避しながらバーチャル空間で訓練を受けられるツールを開発した。

 BIMデータを使って虎ノ門ヒルズビジネスタワーの細密な建物屋内モデルを制作し、3D都市モデルと統合することで、屋内外をシームレスにつないだバーチャル空間を構築。災害時の人の動きを複数の避難計画でシミュレーションして滞留状況を可視化し、適切な避難方法を検証できるようにした。

 森ビルの担当者は「災害はいつ起きるか分からない。コロナ禍だから訓練はできないと、諦めるようなことはしない」とし、デジタル技術を駆使して引き続き都市や街の安全を守る方針だ。


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