【記者座談会】国交省、「偽装一人親方」にメス/舗装最大手NIPPOを非公開化へ | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【記者座談会】国交省、「偽装一人親方」にメス/舗装最大手NIPPOを非公開化へ

 国土交通省が一人親方問題への対応策の具体化を進めている。なぜこのタイミングなのか。

 社会保険の未加入対策が始まるまでは従業員であれ一人親方であれ、実質的な処遇に大差はなかった。しかし、対策が進んで加入率が100%に近い水準となり、建設業法でも位置付けられると両者には確実に隔たりが生じた。

 専門工事企業にとっても死活問題だ。従業員を偽って一人親方化させる企業は社会保険料などの負担が軽くなり、コスト競争で優位に立つ。時間外労働の上限規制の建設業への適用開始も迫る中で、悪質な企業の排除は一連の担い手確保の取り組みを進める上で欠かせない。

 国交省の検討では適正な一人親方を明確に位置付けるとともに、実態が雇用であるのに偽って一人親方として仕事をさせる企業への対策を決める。偽装企業のシャットアウトは元請けが担うことになるため、現場での確認が煩雑になり形骸化しないよう、実務レベルで対応可能な方策を今年度いっぱいで探る。

 一人親方は自身が望んで独立するのが本来の姿だ。国交省の検討会で座長を務める蟹澤宏剛芝浦工大教授は、適正な一人親方について“建設業フリーランス職人”という新たな名称を提案した。「若い人の憧れになるような働き方として否定されるものではないし、報われるようにしないといけない」と強調していた。

 一人親方だけに限らずフリーランスを取り巻く環境は、2023年10月からインボイス制度が施行されるなど大きく変化していく。「独り立ち」というと聞こえはいいが、技能レベルはもちろん経営・税務・安全衛生などにすべて対応しなければならない個人事業主であることを理解すべきだ。


国交省は一人親方問題への対応策の議論を開始した



◆企業価値向上への最善策

 ENEOSホールディングス(HD)は、ゴールドマン・サックスが間接的に持分のすべてを持つ合同会社乃木坂HDとエーテルHD合同会社との間で、連結子会社で舗装工事最大手のNIPPOの非公開化に向けて、公開買い付けなどに関する基本契約を結んだ。

 公開買い付けは、10月中旬から11月中旬ごろの開始を目指しているとのことで、NIPPOは賛同を表明している。

 上場子会社のガバナンス体制の公正性・透明性がより一層要請されており、ENEOSHDは、環境対応型事業、次世代型エネルギー供給事業などで、大きな効果が期待できるテーマはないと判断し、親子上場の解消を決めたとしている。親子上場の解消には完全子会社化があるけれど、事業領域の重複は限定的なことから、ENEOSHD主導による完全子会社化でのNIPPOの企業価値向上の実現は難しいと判断した。

 NIPPOの非公開化は、親子上場に伴った親会社と少数株主の利益相反の可能性の回避や成長戦略の立案、経営陣の意思決定の柔軟化や迅速化に寄与し、事業環境の変化に対応して、企業価値向上に向けた最善の方策であるとの見解を示している。NIPPOの新たな成長の柱の構築に向けて、主に海外事業、不動産開発事業の2点でさまざまな支援を行い、成長戦略を一段と加速させるそうだ。

 両社は企業価値向上を実現した後は、再上場を基本方針としていて、再上場を目指すことがENEOSHDやステークホルダーの利益につながるとしている。ただ、現時点で再上場の時期などの具体的な想定はなく、目標や方針も未定だが、再上場直前には、同社の連結対象から外れる予定とのことだ。



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