【記者座談会】災害復旧工事の損害費用負担 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【記者座談会】災害復旧工事の損害費用負担

A 15日に開かれた中央建設業審議会の総会で災害復旧工事中に発生した損害の費用負担について、国土交通省が新たな考え方を示したね。

B 国交省は復旧工事の2次災害については発注者の責めに帰すべき事由に該当しない「不可抗力」であると改めて位置付けた。その上で請負代金の1%としている受注者の負担額の軽減を提案した。

C 前年の中建審総会ではリスクが高い復旧工事の2次災害は「発注者の責めに帰すべき事由」だとして受注者の1%負担をなくそうとしていた。ただその論拠だと、リスクが高いかどうかの判断の難しさや発注者が損害賠償責任を負担することになりかねないとの指摘があり、前提条件を再整理した。

B ロジックはどうあれ行き着く結論としては、1%の受注者負担を減らそうということで変わりない。総会では受注者である建設業団体はもちろん、負担すべき費用が増える公共発注者の立場からも賛同の声が上がった。

C 国交省が示した2次災害の事例では数百万円を受注者が負担したケースが多数あった。全国建設業協会の奥村太加典会長は「利益が数%のところが多く、地域建設業にとっては負担が大きくてつらい」と中建審の場で訴えた。

D 全建と国交省のブロック意見交換では、全ての工事を対象に1%負担をなくしてほしいとの意見も出ていた。

B 民法の原則では、損害額の全額を受注者負担としている。これを建設工事では、国交省が特例的に1%としている。このため、全工事でゼロにすることは難しいのではないか。

C 工期が長期間にわたる請負の建設工事には民法の原則は適さないとの指摘もある。昨今の激甚災害の頻発化も問題となっていることから、具体的な条文案が示される次回の中建審総会で熟議がなされることを期待する。

災害復旧工事中に発生した損害の費用負担について、国交省が新たな考え方を示した



未来につながる活用促進に期待

A 話は変わるけど、国際建築住宅産業協会が主催する国際会議「WOODRISE 2021 KYOTO」が15日から17日までの3日間、京都市の国立京都国際会館で開かれたね。

D WOODRISEは、中高層木造建築物の発展に必要な材料・技術・工学的なニーズや将来性を展望することを目的に、関係者が一堂に会するイベントだ。17年にフランスのボルドー、19年にカナダのケベックで開かれている。日本での開催は今回が初めて。会場とオンラインを合わせて約800人が参加し、中高層建築物の木材活用に向けた最新の話題や考察について情報共有した。

E 「持続可能な開発に向けた木の建築-伝統から未来へ」をテーマに、中高層木造に関するテクニカルワークショップや住宅建築業界でのSDGs(持続可能な開発目標)推進に関するセッションのほか、建築家の隈研吾氏による特別講演など盛りだくさんのプログラムだった。16日に会見した国際建築住宅産業協会の矢野龍会長は、改正公共建築物等木材利用促進法の施行による木材利用の利用拡大などに触れた上で、同会議が中高層建築物の木材利用促進につながることに期待を込めた。

D 隈氏は特別講演で、『那珂川町馬頭広重美術館』『国立競技場』など、木材を積極的に活用した作品にまつわるエピソードを紹介しながら、人に威圧感を与えない小断面木材の有効性などを強調していた。

A 炭素を固定し、再生産可能な木材を積極的に利用することは、化石燃料の使用量抑制やCO2の排出削減にも寄与する。未来につながる木材利用の促進に期待したい。



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