【伸展する関西の建設ICT⑭】着工前に細かな不具合解消 鹿島 | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【伸展する関西の建設ICT⑭】着工前に細かな不具合解消 鹿島

 鹿島が大阪市内で施工するアーバンネット御堂筋ビル建設工事を統括する梶原哲也所長は、既存建物解体から新築工事着手までの1年3カ月の間に「BIMを活用するための仕掛けを施してきた」と明かす。着工時の仮想竣工を全社展開する同社だが、ここではその一歩先をいく仮想竣工検査にチャレンジした。これから躯体工事が本格的に動き出す現場では、前倒ししてモデルの精度を上げ、施工時の不具合を排除してきた。「これからBIM導入の効果が明確に出てくる」と手応えを口にする。

左から川島氏、梶原氏、谷口氏

 工事はS造1部SRC・S造塔屋1層地下2階地上21階建て延べ4万2362㎡。基本設計をNTTファシリティーズ、実施設計と施工を鹿島が担う。2020年3月に解体工事に着手し、ことし7月に着工した。建設地は大阪のメインストリートである御堂筋に面しており、鹿島が設計から施工、維持管理までの一貫したBIMを実現した20年1月竣工のオービック御堂筋ビルに隣接している。梶原所長は「さらに踏み込んだBIM活用にチャレンジしていきたい」と先を見据えている。

検査風景


 起工式では仮想竣工モデルのデータを360度カメラに連携させ、関係者に竣工時のリアルな姿を披露した。川島章宏副所長は「意匠や設備の詳細はまだ正式決定していなかったが、完成時の空間を感じてもらおうと、あらかじめ想定している仕様でモデルを作った」と説明する。今後、工事が本格化した際には現場作業員や資材の動きを3次元的にリアルタイム管理ができる自社開発の『3D K―Field』についても有効活用する計画だ。

 梶原所長は「2次元と3次元では合意形成のスピードが大きく違う。着工時に仮想竣工モデルがあることで、施工段階では前倒しでもの決めを進められている」と説明する。オフィスロビーや商業、パブリックスペースが入る低層階ではまだ詳細な仕様まで詰め切れていないが、事務所エリアとなる4階から20階の基準階では既に基本仕様が固まっている。「BIMモデルを使った合意形成によって施主のレスポンスも早い」と強調する。

 着工時には既に精度の高い設備モデルも整えていた。谷口博和設備課長は「全ての設備部材のモデル化を前提に進めており、設備工事でも前倒して早期のもの決めを進めていく。工事最盛期の手戻りは大幅に減らすことができるだろう」と期待する。一般的に高層建築では建物の仕様変更に伴い、屋上に配置する設備機器のレイアウトが最後まで決まらないが、川島副所長は「既に屋上部の優先的な検討に着手できているのも、BIM導入の明確な効果」と考えている。

モデルに書き込まれた指摘事項


 全国の現場に先駆けて試みた着工時の仮想竣工検査は、谷口設備課長の発案で実現した。「着工前にモデル上で細かな不具合までつぶせた意味は大きい」。総勢20人でモデル内をウォークスルーしながら検査を進め、1週間かけて指摘事項をモデル内にマークアップした。指摘事項は意匠、品質、BIM合わせて約300カ所にも達した。川島副所長は「屋上も運用時の設備メンテナンスを意識した視点でチェックできた」と付け加える。

 現場では維持管理段階のBIM活用についても重点テーマの1つに位置付けている。先行するオービック御堂筋ビルでは維持管理BIMモデルから情報を出し入れし、iPadを使った建物管理が進行中。梶原所長は「生産にBIMを活用する以上、FMにも活用したい」と考え、維持管理への活用を前提にBIMソフトの選定も行った。3次元モデリングにはグループ会社のアルモ関西と鹿島クレス西日本支社が参加しており、オービック御堂筋ビルと同様に「オール関西チームでBIMに挑んでいく」と力を込める。

屋上の3次元モデル


 

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