–万博事業の主要施設の設計が始まった
「2020年7月にプロデューサーに就任し、同年12月に全体基本計画をまとめた。設計が進み、徐々にかたちが出来上がっていくことにワクワクしていると同時に、責任も感じている。現在も関係者とのディスカッションを継続しており、万博のシンボルとなる大屋根の設計は自分がイニシアチブを取っているし、そのほかの主要施設でもアイデアを取り入れていただいたりしている。基本計画で自分の仕事は終わったというより、いまも一緒に設計を進めている感覚だ」
–改めて、大阪の印象は
「万博に関わるようになって感じたのは、人と人とがダイレクトに関係を持ちながら社会を動かしていくダイナミズムさを持っているということ。東京は社会の仕組みの下に人がいるが、大阪はその逆で人が中心というところがあり、そこに大きな魅力を感じている。まちに緑が少ないということであるが、御堂筋では緑を増やす試みがなされているし、うめきた2期でも緑地の整備が計画されている。万博でも、会場の中心に大きな森を配置したいと考えている。これからの社会は、都市環境と自然の共存が欠かせない。万博をきっかけにより緑化が進んでいくことを期待している」
「建築の観点から見た大阪は、戦前戦後の古い建築が多く点在し、歴史の厚みを感じる。また、市民の皆さんの努力によって魅力を増している水辺空間は、地上と連動することで相乗効果を生み出している」
–大阪に相応しいまちづくりの方向性をどう考えるか
「大阪は歩き回ってこそ魅力が高まると思っている。まちがヒューマンスケールで、小さなお店が集合する魅力的な場所が点在し、たまに水辺に出会う。そういうまちは歩き回る楽しさを生み出すことができる。いまある大阪のポテンシャルを増幅させるのが良いのではないか。東京と同じような開発をする必要はない。大規模開発とヒューマンスケールの融合は世界的にも求められていること。大阪が先んじてモデルを提示できるだろう。また、大阪には良い意味での過剰さがある。これは自然発生したものだと思うし、このような活気、エネルギーみたいなものが新しい開発にどうつながるのか興味深い」
–これから建築家の役割はどう変化していくか
「建築家の役割は、5年程前から大きく変化してきている。かつては素晴らしい建築をつくることで完結していたが、情報環境が整い、環境への意識が高まっている現在は、建築単体では成立せず、建築が周辺環境と関係性をつくり、その地域一帯が活性化し全体の価値を高めることが求められている。そういう意味では、人と人との関係でつくり上げてきた大阪は最先端を走っているまちと言える」
–万博は未来のまちづくりに対する提案にもなるのか
「新型コロナウイルスによって、人と会うことの大切さを改めて思い知らされた。人と会う、人が集まる究極のイベントが万博であり、世界中の人々が1カ所に集まって交流する。これまで当たり前だった『リアル』が、本当に価値のあることだと実感していただけるだろう。これから外国や企業のパビリオンの計画も動き出す。自然素材や新素材、リユース・リサイクルなど新しい都市環境のかたちがご提示できると考えている」