【2022年関西支社 新春企画】大阪・関西万博プロデューサー 建築家の藤本壮介氏に聞く | 建設通信新聞Digital

5月9日 木曜日

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【2022年関西支社 新春企画】大阪・関西万博プロデューサー 建築家の藤本壮介氏に聞く


 関西圏を牽引するリーディング事業として期待が集まる2025年大阪・関西万博。会場となる夢洲(大阪市此花区)では、未来社会に向けた実験場として万博開催前から実証実験などへの活用が動き出した。会場デザインプロデューサーを務める建築家の藤本壮介氏は「人が中心」のまちづくりの重要性を強調。関西圏のインフラ整備を担う近畿地方整備局の東川直正局長は「関西の魅力を世界に発信する絶好の機会」とし、安全で活力のある「夢のある関西」の実現を訴える。 大阪のさらなる発展の起爆剤として大きな期待がかかる大阪・関西万博。プロデューサーを務める建築家の藤本壮介氏は、日本国内のみならず海外でも独創的な建築作品を多く手掛け、若手建築家の中心的な存在だ。「人と人のつながりが大阪の最大の魅力である」と語る藤本氏に、大阪のこれからの可能性について聞いた。

 

                                         ©David Vintiner ※転用厳禁


–万博事業の主要施設の設計が始まった
 「2020年7月にプロデューサーに就任し、同年12月に全体基本計画をまとめた。設計が進み、徐々にかたちが出来上がっていくことにワクワクしていると同時に、責任も感じている。現在も関係者とのディスカッションを継続しており、万博のシンボルとなる大屋根の設計は自分がイニシアチブを取っているし、そのほかの主要施設でもアイデアを取り入れていただいたりしている。基本計画で自分の仕事は終わったというより、いまも一緒に設計を進めている感覚だ」

–改めて、大阪の印象は
 「万博に関わるようになって感じたのは、人と人とがダイレクトに関係を持ちながら社会を動かしていくダイナミズムさを持っているということ。東京は社会の仕組みの下に人がいるが、大阪はその逆で人が中心というところがあり、そこに大きな魅力を感じている。まちに緑が少ないということであるが、御堂筋では緑を増やす試みがなされているし、うめきた2期でも緑地の整備が計画されている。万博でも、会場の中心に大きな森を配置したいと考えている。これからの社会は、都市環境と自然の共存が欠かせない。万博をきっかけにより緑化が進んでいくことを期待している」
 「建築の観点から見た大阪は、戦前戦後の古い建築が多く点在し、歴史の厚みを感じる。また、市民の皆さんの努力によって魅力を増している水辺空間は、地上と連動することで相乗効果を生み出している」

–大阪に相応しいまちづくりの方向性をどう考えるか
 「大阪は歩き回ってこそ魅力が高まると思っている。まちがヒューマンスケールで、小さなお店が集合する魅力的な場所が点在し、たまに水辺に出会う。そういうまちは歩き回る楽しさを生み出すことができる。いまある大阪のポテンシャルを増幅させるのが良いのではないか。東京と同じような開発をする必要はない。大規模開発とヒューマンスケールの融合は世界的にも求められていること。大阪が先んじてモデルを提示できるだろう。また、大阪には良い意味での過剰さがある。これは自然発生したものだと思うし、このような活気、エネルギーみたいなものが新しい開発にどうつながるのか興味深い」

大屋根完成イメージ


–これから建築家の役割はどう変化していくか
 「建築家の役割は、5年程前から大きく変化してきている。かつては素晴らしい建築をつくることで完結していたが、情報環境が整い、環境への意識が高まっている現在は、建築単体では成立せず、建築が周辺環境と関係性をつくり、その地域一帯が活性化し全体の価値を高めることが求められている。そういう意味では、人と人との関係でつくり上げてきた大阪は最先端を走っているまちと言える」

–万博は未来のまちづくりに対する提案にもなるのか
 「新型コロナウイルスによって、人と会うことの大切さを改めて思い知らされた。人と会う、人が集まる究極のイベントが万博であり、世界中の人々が1カ所に集まって交流する。これまで当たり前だった『リアル』が、本当に価値のあることだと実感していただけるだろう。これから外国や企業のパビリオンの計画も動き出す。自然素材や新素材、リユース・リサイクルなど新しい都市環境のかたちがご提示できると考えている」





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