【除草作業をDX】自律走行草刈り機の実用機完成 金杉建設ら | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【除草作業をDX】自律走行草刈り機の実用機完成 金杉建設ら

実用機


 金杉建設(埼玉県春日部市、吉川祐介代表取締役)、アクティブ・ソリューション(横浜市、島村明代表取締役)、創和(千葉県船橋市、西尾貴至代表取締役)、ARAV(東京都文京区、白久レイエス樹代表取締役)の4社で構成するコンソーシアムは、河川堤防で使う「大型自律走行型草刈り機」の実用機を完成さした。新たに除草面積や最適走行経路の自動算出のほか、赤外線カメラを応用した夜間作業への対応などの機能を検証し、除草作業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する。

 大型自律走行型草刈り機の実用機は、昨年度の開発機に続き、2021年度も国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(PRISM)」に採択された。全方位レーザースキャナーやGNSS(衛星測位システム)コンパス、赤外線カメラ、屋外用Wi-Fiなどを搭載している。実現場で活用するため、カメラやIMU(慣性計測装置)を開発機に比べ増やすなど搭載機器を再編成するとともにコンパクト化して実装した。

コンソーシアムのメンバー


 昨年度の試行では設定したルートを正確に走行し、人などの障害物を検知した際には安全に停止するなどの成果を確認した。コンソーシアムの代表幹事を務める金杉建設の吉川代表取締役は「今年度は除草するエリアを指定して自律走行できることを目標に開発している。このほかにも各種センサーを使用して安全性を向上し、GNSSデータを使った出来形管理などの施工管理もできるようになる」と話す。

 2月中にも、金杉建設が施工中の「R3三郷・吉川河川維持工事」で、堤防広さ約2万㎡を対象に実用機の試行を始める予定だ。

 除草面積は、大型自律走行型草刈り機が走行した経路のデータをもとにグーグルマップ上で容易に算出することが可能となる。走行予定と走行後の経路もデータとして保存できる。21年度のPRISMで新たに提案を求められていた「非接触下における施工管理の効率化技術」を実現する。

 最適走行経路の自動算出プログラムも新たに導入する。従来は、パソコンで走行経路を作成していたが、グーグルマップや現場の3次元データで作業範囲を指定すると、最適走行経路を自動計算し、自律走行するプログラムを完成させる。

機器構成(案)


 赤外線カメラを応用した夜間作業の対応として、画像のAI(人工知能)解析により、作業範囲への進入検知機能を検証する。金杉建設工事部の藤沼修次長は、「昼夜作業することで工程の短縮につながる。季節によっては夜間作業ができるため、熱中症対策にもなる」と見据える。

 新たに、直感的に操作が可能となるGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を採用し、管理画面をタブレットに表示させることで、現場監督が扱えるようにするのも特徴だ。システムを開発した会社ではなく、普通の作業員でも容易にタブレットで作業ができる仕様とする。

 障害物検知時の動作アルゴリズムの完成も目指す。昨年度は走行時に人などの障害物を検知した場合、安全にその場で停止していたが、今年度は自動回避や自動経路復帰の機能を検証する。

 吉川代表取締役は「維持工事の中の除草作業は決してなくならず毎年継続的にある仕事だ。日本全国で同様に除草作業が行われているため、省力化・効率化することができれば、業界全体に与える波及効果も大きい」と話す。今後も試行結果を踏まえ、さらなる省力化、作業の高度化・効率化を目指す。


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