
野津社長
社を挙げて取り組んできたBIMは設計部門と施工部門が連携しながらサービス付高齢者住宅を中心に十数件の導入実績を誇るが、設計から施工、維持管理までのフルBIMを手掛けた実績はまだない。PFIはあらかじめ提示された要求水準を満たせば、自由な発想で新技術を導入でき、新社屋では自社が建築主であるという視点から円滑な維持管理に向けたBIM活用が検証できる。「この2つでフルBIMにチャレンジできる意義は大きい」と考えている。しかも県内のPFIで地元企業がSPCの代表を務めるのは初の試み。国土交通省21年度のBIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業としても採択された。

SPC代表としてPFI優先交渉権を獲得した鳥取県西部総合事務所新棟・米子市役所糀町庁舎整備等事業
それでも社内にBIMを本気になって取り組もうという前向きな意識は広がらなかった。19年にBIMをPDCAサイクルで回す幹とし、そのプロセスにおける情報の流れ方を定めた独自BIM規格『Σ-BIM』の構築が転機となった。応用技術(大阪市)が提供するRevit支援パッケージの『BooT・one』がその基盤を支えた。新田氏は「Revitを使うだけで生産性が向上するわけではない。仕事の流れに沿って、目的を持った正しいデータを作るからこそ、情報は循環し、BIMのメリットが出てくることを実感した」と振り返る。
大手ゼネコンを出発点に、中堅・中小の建設会社にもBIM導入への機運が広がりつつある中で、野津社長は「BIMは魔法の杖ではなく、BIMユーザーに取り組みのメリットを実感してもらうことが重要」と訴える。BIM規格の構築をきっかけに「社内の各部門がBIM導入の目的をしっかりと感じ、それが意識変化につながった。特に施工部門に当事者意識が生まれたことが何よりも大きい。ようやく組織が一枚岩になってきた」と手応えを感じている。

新社屋の完成イメージ