【BIM未来図・美保テクノス③】維持管理BIMに踏み込む ISO19650認証取得へ | 建設通信新聞Digital

5月16日 木曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図・美保テクノス③】維持管理BIMに踏み込む ISO19650認証取得へ

 設計から施工、維持管理までのフルBIMに挑戦する美保テクノス(鳥取県米子市)だが、野津健市社長は「BIMによる社としての成長戦略を完全に描けているわけではない」と胸の内を明かす。BIMを生産システム改革の手段に位置付けても、導入目標の到達点をどこに設定するかによって、戦略図は大きく変わってくる。大手ゼネコンに先導されるように建設会社のBIM導入の流れが広がりつつあるが、同社のように地域建設会社が本格導入に踏み切るのは全国でもほんの一握りだけに注目が集まっている。

 BIM導入を積極的に進める同社の取り組みを参考にしたいと、全国各地の建設会社からアドバイスを求める問い合わせも増えている。野津社長は「同業から相談されることはとても光栄なことだが、それが本当の強みとして評価されているわけではない。われわれにとってはBIMがきっかけになって建築受注につながるなど、社としての成長を後押しするものにならなければ、BIMを導入した目的を達成できたとは言えない」と考えている。

 だからこそ本格着工を迎えるPFI事業と自社新社屋のフルBIMプロジェクトでは「設計施工にとどまらず、維持管理段階へのBIM活用のステージに踏み込む」という強い思いがある。円滑な建物運用や物件の長寿命化を見据えたBIMデータの活用は建築主にとっての大きな利点になり得る。維持管理BIMで成果を出せるようになれば、受注時の付加価値として建物ライフサイクルの視点から提案できる。「まさにフルBIMへのチャレンジは将来につながる挑戦である」と力を込める。

維持管理の視点も提案


 BIM標準ソフトとして『Revit』を定め、それを使いこなすために支援パッケージ『BooT・one』を活用し、規格化も完了した同社は、次のステップとして国際規格ISO19650の認証取得にも乗り出そうとしている。これはBIMを使って構築した資産のライフサイクル全体に渡って情報を管理する規格となり、対外的にもきちんとBIMを使って生産を進めているという評価にもつながる。

 国内ではBIMを基盤に設計から施工、維持管理に至るまでの業務プロセスを規定する目的から、大手ゼネコンが先行して認証取得に乗り出している。現時点で認証取得したのは全世界で200社、日本国内ではまだ6社に過ぎない。同社は既に取得に向けた社内トレーニングを済ませており、1年後にも認証取得できる見通しで、実現すれば地方建設業としての先行事例となる。

 新田唯史BIM戦略部長は「BIMの導入プロジェクトが増え、正確なモデルをつくり、社内では後工程にきちんと引き渡す流れを重視している。それがBIM成功の秘訣と考えており、その証として自分たちの進めているデータ流通の位置付けを第三者に判断してもらうことを決めた」と明かす。ISO19650の取得は建築主からBIMの評価を得る手段としても有効に働きそうだ。

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