【BIM未来図・美保テクノス②】縄張りなくなり踏込む意識 着実に等身大のBIM活用 | 建設通信新聞Digital

5月16日 木曜日

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【BIM未来図・美保テクノス②】縄張りなくなり踏込む意識 着実に等身大のBIM活用

 「部門間連携ができていないと、社員が気付いてくれたことが、BIM活用を次の段階に進めるきっかけになった」。美保テクノス(鳥取県米子市)の野津健市社長は、社内の意識変化をそう例える。2019年のBIM戦略部発足を機に独自のBIM規格を構築し、導入基盤を整えたが、当初は設計部門と施工部門には、お互いに対する不満がくすぶっていた。

 BIM導入を先導してきた設計部門は正しい図面を作成することに注力してきたが、次工程を担う施工部門への配慮に欠けていた。「工期半減」というあまりにも高い目標設定を示したことで、施工部門はあきらめ感を抱いてしまい、本気になって取り組む意識が薄れていた。両部門はお互いに連携を意識することもなく、噛み合わない状態が続いていた。

 意識変化が起きたのは、標準ツールに位置付けるオートデスクのBIMソフト『Revit』を使いこなすために導入した支援パッケージ『BooT・one』を提供する応用技術(大阪市)からの助言だった。大手ゼネコンでBIMの推進役を担い、現在はBooT・oneのテクニカルディレクターを務める高取昭浩高取建築情報化コンサルティング代表からの言葉が施工部門に共感を与えた。

BIM通じ社内意識も変化


 21年6月に開いた応用技術との意見交換で、高取氏は「日本の建築生産システムは、図面の中にさまざまな情報を入れ込んでいる。そこには情報を伝えるための図面化の作業があり、実はその図面化に多くの人が苦労している。BIMプラットフォームの中でデータのやり取りを行う流れが確立できれば、将来的には図面ではなく3次元モデルによる情報のやり取りになる。図面をなくすことがBooT・oneの最終目標の1つでもある」と、率直に現場目線のアドバイスを送った。

 新田唯史BIM戦略部長は「いつの間にか、設計と施工の両部門が抱いていた縄張り意識がなくなり、逆にそれぞれがそれぞれの領域に踏み込む前向きな意識が芽生えてきた」と実感している。社内ではBIMのプロセスを円滑に回すことを第一に考え、各担当者は目の前にある目標に向かって突き進めるようになった。野津社長は「最初から手が届かないような目標設定では誰もついてこない。着実に前進できるような目標を掲げていくことが何よりも近道」と強調する。

 フルBIMに挑むPFI事業の鳥取県西部総合事務所新棟・米子市役所糀町庁舎整備等事業はS造4階建て延べ約3600㎡。4月に着工し、23年9月の完成を目指している。国のBIM導入検証モデル事業にも採択された。新田氏は「われわれの目線からできることと、できないことを明確に把握しながら取り組んでいく」と、あくまでも等身大のBIM活用を目指す。同時並行で進む新社屋も同様だ。「トライアル・アンド・エラーを繰り返しながら一歩ずつ確実に前へ進んでいる。実はフルBIMへの挑戦を許可してくれた社長方針があるからこそ、われわれは思いっきり挑戦できている」と感じている。

Revit支援ツール「BooT・one」をフル活用



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