【記者座談会】2022年3月期決算が出そろう/ゼネコン 厳しい状況も次期以降回復見込む | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【記者座談会】2022年3月期決算が出そろう/ゼネコン 厳しい状況も次期以降回復見込む

A 2022年3月期の大手・準大手25社の決算が出そろった。

B 営業損失2社を含む19社が営業減益となったのは、やはり厳しい状況と言わざるを得ない。近年の受注競争の激化で受注時採算が低下し、個別案件の損失が業績に直接影響を与えやすい環境になっており、複数の企業は個別案件の損失を計上する結果となった。加えて、22年3月期後半にかけての資材価格の高騰で、利益の積み上げが難しくなった。

C だが、「損失は今期で引当計上し、次期以降は回復する」との声もある。その背景になっているのが、需要の堅調さだ。実際に22年3月期の単体受注は14社が前期比増となった。手持ち工事量は各社とも着実に積み上がっている。リスク要因は資材価格の動向だ。物価スライド条項を契約に盛り込んでいなかった海外案件で、2月から3月末までの資材高騰による損失を億単位で追加計上したゼネコンもある。国内では、経済界の働き掛けもあり、価格転嫁に対する民間発注者の理解も広がっていると聞くが、これまでの国内民間案件でスライドなどの条項を盛り込めていない案件の影響がどの時点で業績に顕在化してくるのか、不安は尽きない。

B あくまでも一般論だが、需要は豊富にあり、各社は手持ち工事量がキャパの上限に達しつつある。資材価格の動向が不透明な中であえて厳しい競争に飛び込むリスクを避けようという意識が働いても不思議ではない。それが競争環境の緩和につながれば、利益面も好転してくるのではないか。

C あるゼネコン幹部は「そう期待している」としつつ、「1年前も同じことを言っていたんだけどね」と苦笑していた。いずれにせよ、豊富な需要を適正利益で取り込める環境に早くなってほしいと願うばかりだ。

原油価格や資材価格の高騰、円安、ウクライナ情勢など、先行き不透明で予断を許さない状況が続きそうだが、これらを注視しながら、各社ともに生産性向上などの施策に力を入れる

道路舗装会社は原油価格高騰が利益に影響

A 設備工事会社はどうか。

D 電気設備工事大手5社の個別は1社が増収営業増益を達成し、2社が減収営業増益、2社が増収営業減益となった。新型コロナの影響で設備投資が延期・凍結され、3社が減収営業減益となった21年3月期から、状況は好転したようだ。受注高も前回の4社減少から、今回4社が増やした。空調設備工事を主力とする上場大手6社も同様の状況だ。連結ベースで増収4社、営業増益4社となり、全社減収の21年3月期から一転した。受注高も全社が増えた。

E 情報通信設備工事は、大手3社ともに前回同様、増収増益となった。新型コロナの影響でリモート環境整備の機運が高まり、高度無線環境整備や5G(第5世代移動通信システム)の基地局整備などが寄与した。

A 道路舗装会社11社はどうか。

F 原油価格高騰の影響が利益に大きく響き、全社が減益となった。受注高は、前期の反動減などから、11社のうち8社が前年同期比減となっているが、それほど大きく減少していない。一層提案力を磨くなどして、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」やインフラの維持・更新などの受注に注力する。原油価格の動向やウクライナ情勢など、予断を許さない状況が続きそうだが、受注の確保とともに、働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)、カーボンニュートラルの取り組みにも力を入れる方針だ。

A セメントメーカー大手4社の動向は。

G 資材価格高騰やそれに伴うエネルギーコストの上昇により、全社が減収減益となった。ウクライナ情勢の混乱で、セメント製造に不可欠な石炭の輸入先にも各社が目を光らせている。

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