【クローズアップ】Adenのデジタルツインプラットフォーム「Akila」 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【クローズアップ】Adenのデジタルツインプラットフォーム「Akila」



デジタルツインを構築し、BIMやさまざまなモジュールを統合した




フランス人により設立されたアジア最大規模の総合ファシリティー・マネジメント企業、Aden(アデン、本社・上海)は、建物の維持管理やESG(環境、社会、企業統治)関連業務を効率化・最適化するデジタルツインプラットフォーム『Akila(アキラ)』を展開している。センサーから得られるデータをAI(人工知能)などで解析し、シミュレーションすることで、その結果を建物の自動制御に利用する。省エネルギー化やCO2排出量削減に必要な業務をワンストップで行うことができる。Akilaを販売する日本法人の設立準備を進めており、2023年度の本格稼働を予定している。



【AIでデータ解析し自動制御/建物のゼロカーボン化に貢献】

同社は、21年9月のAkilaの正式リリースに合わせ、製品と同名の子会社を設立し、販売を推進してきた。建物管理面積は、アジア全域で350万㎡、サイト数は100カ所を超え、不動産管理の意志決定やESGを強力にサポートしている。革新的テクノロジー関連新興企業100社を表彰する世界経済フォーラムのテクノロジー・パイオニア賞を、ことし5月に受賞するなど高い評価を得ている。

AdenのIFM(インテグレーテッド・ファシリティー・マネジメント)プラットフォームを進化させたAkilaは、省エネルギーや環境ソリューションなどのモジュールを統合しIFMのデジタル化を推進するためのコアとなるソフトウェアだ。協業しているダッソー・システムズなどが提供する3次元CADなどで作成したBIMモデルをベースにデジタルツインを構築し、設計や施工、運営までのライフサイクルコストを効率化する。

建物のエネルギー利用状況をリアルタイムに可視化するとともに、取得したデータをAIで解析し、その結果を設備機器の自動制御やIoT(モノのインターネット)センサーと連動した施設管理に活用する。資産管理、エネルギー、ワークスペース、リーシング、環境関連の各分野の最適化や効率化、コストダウンにつなげる。

エネルギー消費を分析し、リアルタイムで見える化する



◆ESGレポートの作成業務を自動化

具体的に、資産管理ではボイラーやコンプレッサーなど設備機器の耐用年数の増加やTCO(総保有コスト)の最適化に向け、予知保全や予防保全、改良保全、点検管理、工程管理などのワークフローを最適化する。

エネルギー分野では、各種機器に取り付けるセンサーとAIによるシミュレーションをフル活用する。エネルギーのベンチマーク分析やコーホート分析、リアルタイムモニタリング、HVAC(冷暖房空調機器)の自動制御、エネルギー削減可能余地の検証などにより、脱炭素目標達成に向けた具体的なロードマップを示す。

ワークスペースの管理では、リアルタイム・ロケーションシステム、会議室マネジメント、アクセス・コントロール、顔認証、ドア開閉マネジメントなどのセキュリティーマネジメント機能を提供する。

入居テナントを支援するリーシング事業では、BIMデータの可視化、複数サイトのオペレーションとメンテナンス、収益実績と予測、テナント向けポータルサイトなどを提供するほか、施設の使用状況を可視化する。

環境関連は、デジタル版廃棄証明書の発行、コンプライアンス管理、オペレーション管理などがある。例えば清掃員の作業箇所をリアルタイムで把握するほか、業務報告書の作成などを自動化する。また、各種センサーが取得するデータを分析してCO2排出量を数値化し、リアルタイムで把握するほかESGレポーティング業務も自動化する。



◆CO2排出量可視化ロードマップを作成

新築とリニューアル双方で利用でき、新築の場合は設計や施工で利用したBIMを維持管理に適したデータに変換してAkilaに取り込み、ライフサイクル全体でオペレーションに利用する。CATIA以外のソフトで作成したBIMモデルを取り込むこともできる。リニューアルでも、2次元図面や3次元測量で取得したモデルを1週間程度でBIM化し、Akilaに取り込んで運用する。

建物のゼロカーボン実現に貢献するのもメリットの1つだ。Aden日本事業責任者の藤井亮太氏は「ゼロカーボンの達成にはCO2排出量の見える化が不可欠となる。その上でシミュレーションを行い、脱炭素に向けた具体的なロードマップを示すことができる」と説明する。

中国などに拠点を持つ複数の日系企業がESGレポーティングや設備の自動制御、CO2の可視化などにAkilaを導入している。日本の大手設計事務所やゼネコンからも引き合いがあり、BIMと連携した維持管理の高度化への貢献が期待されている。

藤井氏は「さまざまなシステムをパッケージしているが、BIMデータを利用し、低いコストでスピーディーに提供するのが強み。早々に日本法人を立ち上げ、建物オーナーへのコンサルティングも含め事業を展開したい」と意気込む。


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