【記者座談会】世界最大級SEP船が始動/新会社の設立相次ぐ | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】世界最大級SEP船が始動/新会社の設立相次ぐ

◆風車の大型化が顕著、活躍に期待

A 清水建設が約500億円を投入して建造を進めてきた世界最大級の自航式SEP船(自己昇降式作業台船)がいよいよ10月に完成するそうだね。

B 現在は兵庫県相生市にあるジャパンマリンユナイテッドの相生事業所で最終の建造工程となる艤装(ぎそう)作業を進めている。当初の予定どおりに10月に完成した後、広島県の江田島に場所を移して操船訓練を行う予定となっている。

C 9日に8メガワット(8000kW)の大型風車14基を整備する「石狩湾新港洋上風力発電事業」に洋上工事の施工者として参画することが発表されたね。

B 第1弾として2023年3月に、ウェンティ・ジャパンが富山県入善町沖で計画する3メガワット風車3基の基礎と風車の据え付けを手掛けた後、石狩湾に向かうようだ。石狩湾では、新たに建造されたこのSEP船を使って完成時点で国内最大となる8メガワットの大型風車の据付工事を担当する。

A 事業効率を高めるため、世界的には風車の大型化が顕著になっているね。

B 清水建設のSEP船は12メガワットを超える大型風車でも効率良く据え付けを進められる世界有数の作業性能を持つ。石狩湾でも高さ90mのタワーなどの巨大な部材を分割することなくフルサイズで一括搭載して施工海域まで運ぶ。タワーを分割して運ばなければならない他のSEP船が約4カ月を要するとされる工事を2カ月で施工できるそうだ。

C 風車の施工は採用するSEP船の性能に大きく左右されるという。発電事業者にとって工期や工事費が事業全体の採算性に直結することになるからだ。風車の大型化が進んでいることもあり、世界最大級の大型クレーンを搭載した清水建設のSEP船は国内外で活躍が期待できそうだね。

9日に都内で会見した清水建設の(左から)清水優エンジニアリング事業本部長、関口猛専務執行役員、白枝哲次新エネルギーエンジニアリング事業部長

本業深化の視点持ちシナジー追求

A ところで、9月に入って新会社設立のニュースが相次いでいる。

B ゼネコンでは、大林組が自立作業ロボット(AMR)と既存設備を統合制御できるサービスを提供する事業会社「PLiBOT」、鹿島がNECと共同で自動化施工システムの一般化に向けた合弁会社「KNC Planning」の設立を発表した。

C 事業内容は異なるが、共通するのは自社で培った技術やノウハウをベースに新たなビジネス展開を目指す点だ。大林組は、20年に建設現場でAMRと仮設エレベーターを連携させるロジスティクスシステムを開発した。そこから建設現場以外への適用拡大を念頭に、AMRと建物設備を連携して制御できる統合制御プラットフォームへと発展させた。

B 鹿島も同社の自動化施工システム「クワッドアクセル(●(Aの4乗)CSEL)」を核とした事業を目標にしている。自社の施工に活用するだけでなく、システムを一般化して普及させるビジネスモデルを描く。

D 建設業にとって“脱請負”は長年のテーマではある。一方で経営の多角化はリスクを伴う。単なる新事業ではなく、本業とのシナジーが見込まれる分野をターゲットにしている点が特徴と言えるね。

B ゼネコン以外では日建設計がハチハチ、ロフトワークと新会社「Q0」を立ち上げた。秋田県と富山県で地方の課題解決につながるプロジェクトを企画・実装・運営する。

D 高齢化に過疎、産業力の低下や空洞化などの課題が存在する地方のプロジェクト参画によって得られる視点は本業の深化に役立つ。日建設計が掲げる社会環境デザインにも合致しており、こちらもシナジーが期待できる。
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