【明工社が創業90周年】最高レベルの品質管理で配線器具提供 | 建設通信新聞Digital

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【明工社が創業90周年】最高レベルの品質管理で配線器具提供

◆徹底した社員教育、品質確保へ抜本改革
インタビュー・明工社、明工商事、福島明工社 代表取締役社長/川村 龍俊氏

 

川村氏

屋外工事用コンセントなどの配線器具を製造・販売する総合専門メーカーの明工社(東京都千代田区)が、創業90周年を迎えた。長い歴史の中で磨き上げた製品の品質と安全性は“明工ブランド”と高く評価され、建設業のプロユーザーや一般ユーザーの信頼に応えてきた。配線器具を社会インフラと捉え、品質向上に主体的に取り組む組織づくりに力を入れてきた3代目の川村龍俊社長に、品質に込めた思いと今後の展望を聞いた。

 1932年に創業した同社は、第2次世界大戦の復興期に、東京・目黒で祖父が始めた日本初の防水ゴムプラグとコネクターの製造販売が原点となった。主に屋外工事現場で使用する製品を開発・販売し、高度経済成長期を経て社業を拡大してきた。現在は住宅用、OA用、医療用、通信用など約3000点の製品を扱う。業界のガリバーであるパナソニック以外で配線器具を総合的に扱う唯一の専門メーカーとして揺るぎないポジションを築いてきた。
 プラグ、コネクター、コンセントなどの配線器具は、水道管などのインフラ製品と同様に、漏電などの事故や不具合が起きないよう法律で細部まで規格が決められている。それゆえ新規の製品開発は難しく、新規参入も少ない。各国の電源電圧は約200ボルト前後に対し、日本は一貫して100ボルトのため、市場が国内に限られるのも特徴だ。

防水ゴムプラグ(左)とコネクター(右)。品質管理と安全性は〝明工ブランド〟として高く評価される


 国内市場で拡大路線を走ってきた同社も、1996年をピークに減少に転じた建設投資と連動して売り上げが減少し、経営方針の転換を迫られた。99年に社長室長に就任した川村社長は利益構造の問題点を分析、「売り上げが伸びた時代の経営から体制を引き締める必要がある」として改革案を作成。節税対策も兼ねて分社化した子会社を、ブランド管理と設計部門からなる明工社、生産部門を集約した福島明工社、営業部門の明工商事の3社に整理統合した。
 続いて営業本部長も兼任し、販路の開拓を再開。2000年代から急速に拡大し始めたデータセンターに着目してサーバーラックに取り付ける配線器具を開発し、市場の半分を押さえるヒット製品となった。

ロングセラーとして業界全体の製品知識の底上げに貢献している『配線器具入門』

 社員教育にも注力。まずは営業マンに第二種電気工事士の取得を促し、製品知識の向上を図った。「配線器具がどのように設計し、生産されるかを学ぶ教材が世の中にない」ことから、同社の製品開発を支えてきた設計部長に執筆を願い、配線器具の構造、施工法、法令、販路などの知識をまとめた『配線器具入門』を出版し、「全社員が必ず読んで勉強するようにした」という。ライバル社も使うなど、業界全体で活用されるロングセラーとなっている。

◆社会インフラの責務を果たす
 07年に福島明工社の社長に就任。「景気が良いときは営業や製造などの直接部門が注目されるが、景気が悪いときはマネジメントをつかさどる総務や製品管理などの間接部門が重要になる」との考えから、教科書を作成した勢いそのままに「教育と品質」の強化に向けた組織改革を断行した。
 例えば、それまでは製品に欠陥があると営業マンが部品交換で対応していたが、徹底的に問題解決を図ることにした。背景には品質マネジメントの国際規格ISO9001が浸透し、クレームがあれば部品の仕入れ先までチェックするトレーサビリティーへの対応がある。「客先からトレーサビリティーの確認を求められたら証拠を提出しなければならない。従来の商習慣では対応できないため、抜本的な変革が必要だった」と振り返る。
 その一環として、各部署のマニュアルも社員自ら作成した。「マニュアルで新入社員を教え、分かりづらいところはその都度見直す」ことで絶えずブラッシュアップする仕組みにした。
 設計、製造、営業など全部門が参加する品質会議も定期開催している。クレーム対応だけでなく、部署間の部材の受け渡しにも不具合があれば解決する。「自社由来の欠陥がないよう、製造と販売が一体になり、これ以上できないレベルまで品質管理を徹底している。結果としてクレームに強い会社になった」と実感する。社会、経済のデジタル化が進み、「配線器具の不具合でデータが紛失すれば膨大な損失を与える。値段に比べ、責任は重い」からこそ、安全確保に抜かりはない。
 18年に明工社、明工商事の社長に就任した。価格競争になりやすく、安全性も求められる難しいビジネスだからこそ、「少しずつ、着実に売り上げを伸ばすのが理想だ。登山に例えると、振り返ってみたら高いところまで登っていたという状況にしたい。社員とともに実現したい」と力を込める。

製造部門の福島明工社では、社員教育を通じて徹底した品質管理が行われている



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