【現場から・東急建設 渋谷駅前地下道工事】VR・4次元シミュレーションで生産性向上 | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【現場から・東急建設 渋谷駅前地下道工事】VR・4次元シミュレーションで生産性向上

 国土交通省関東地方整備局東京国道事務所(石井宏明所長)のインフラDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する。東急建設が施工する渋谷駅前の地下道工事の現場では、プレキャスト製品を活用した大型ボックスカルバートの施工が佳境を迎えた。VR(仮想現実)や3次元モデルに時間軸を組み合わせた4次元シミュレーションなどの新技術に挑戦し、生産性向上を実現している。受発注者双方で多くの知見を積み上げており、次代のモデルケースとしても注目を集める。

◆関東整備局東京国道のインフラDXが加速
 東京国道事務所は11月25日の夜、「R2国道246号渋谷駅周辺地下道工事」(東京都渋谷区桜丘町地先)の現場を報道陣に公開した。東京南西部のターミナル駅となる同駅周辺では、超高層の民間再開発ビルの建設や直轄による地下歩道、歩行者デッキの整備などが進む。

高さ約6m重さ約8tの側壁部材を覆工板開口部(約3×4m)から地下へ搬入

 このうち地下道工事は、重要幹線道路の国道246号などが施工場所となる。道路直上には高架の首都高速道路が走り、歩道橋も近接するなど厳しい施工条件が重なる。こうした中、インフラDXとして新たな試みを数多く導入し、難条件を克服しながら工事を進めている。

先行投入した側壁部材に約4tある頂版(門型部材)を慎重に接合

 東急建設にとっても初の技術を投入する。その一つが同社と旭コンクリート工業が開発した「PPCaボックスカルバート」だ。現場打ちボックスカルバートの側壁と頂版を部分的にプレキャスト部材に置き換えたボックスカルバートの構築工法で、夜間の交通規制期間の短縮や現場作業の省力化につなげる。

 もう一つは、施工の最適化に重要な役割を果たす4次元シミュレーション・VR技術だ。当初の施工計画の検討は従来と同じく2次元の図面を使っていたが、工期短縮など厳しい施工条件が加わったこともあり、CIMの活用にかじを切った。

 現場代理人の池田澄人氏と監理技術者の折田紘一郎氏によると、初めはお菓子の箱を使ったシミュレーションも試したという。その後、3Dプリンターの活用、3次元モデルの作成、さらにはゲームエンジンを使った4次元シミュレーションへと検討方法を昇華していった。

池田氏(左)、折田氏


 クレーンオペレーターのシミュレーションなどVRも積極活用する。現場では、新技術の投入に戸惑う声も一部あったが、協力会社を交えた施工検討会などで対話を重ねた。折田氏は「工事に携わる関係者の“腹落ち”につながった」と語る。

施工計画シミュレーションにより施工の効率化を検討


 この結果、現場の生産性が飛躍的に高まった。例えば夜間の時間帯に施工しているプレキャスト部材の設置作業は、これまで1日1組を想定していたが、2-3組を設置できるようになった。VRの活用は道路信号の視認性確認などさまざまな副次的効果ももたらしていく。

プレキャスト部材の投入方法


 2020年9月に着工し、ことし5月には国道横断部の掘削が完了した。その後、躯体構築などを進め、14日からPPCaボックスカルバート工に着手し、24日の夜間工事で東側の片方(12組)のプレキャスト部材を設置した。25日からは同じく片側のプレキャスト部材の設置に移った。引き続き躯体構築を進め、23年3月の地下車路部躯体(内装工事を除く)の完成を目指す。

 現場見学も既に20件を超え、注目を集める。折田氏は「工程短縮の命題があり、プレキャスト製品を採用した。ほぼシミュレーションどおりに施工し、工程短縮につながっている」と手応えを口にする。DXのモデル的現場として「今後も新しい技術に果敢に挑戦したい」と意気込む。
 同事務所はこの工事を「東京国道DXプロジェクト」の一つに位置付けている。地下道と沿道の再開発ビルの接続確認を行う際に、再開発のBIMデータと地下道のCIMデータを活用して3次元モデルを作成するなど、事業の高度化に取り組んでいる。小野寺純一副所長は「ここで得た知見を集約し、最終的には品川や日本橋などの事業にも生かしたい」と話す。



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