【現場から】コンクリパネル1000枚をキャスターで効率施工 高知市の「オーテピア」 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【現場から】コンクリパネル1000枚をキャスターで効率施工 高知市の「オーテピア」

高知市の新たなランドマークとなる「オーテピア」(完成イメージ) 


 高知市の新たなランドマークとなる図書館や科学館などを含む複合施設「オーテピア」の建設が大成建設・ミタニ建設工業・有生JVの施工で進んでいる。「大きな樹」をイメージした外装に加え、内装には地元を象徴する高知県産木材や漆喰、大理石、土佐和紙などがふんだんに使用される。大成建設の竹蓋慎二作業所長は「完成すれば高知県を代表する建物になる。これまでの経験から難易度は高い建物だが、無事故・無災害で最後までやり遂げる」と力を込めた。 建物全体の外装にはデザインを特徴付けるGRC(ガラス繊維強化セメント)木目化粧パネルが各階に渡って取り付けられる。幅1.2m、高さ3mのパネルは、高知杉をゴムに転写して木目の凹凸がついた型枠を製作後、GRCを吹き付け、転圧、脱型、塗装を経て完成する。
 約1000枚にも上るパネルの設置は建物内部からの設置が困難なため、パネルにキャスターを取り付けて外部から設置個所まで引き込む工法を採用した。「ガラスの取り付けからヒントを得た」(竹蓋所長)というこの工法は、仮置き場でパネルにキャスターを取り付けてクレーンで揚重後、レールに乗せて移動させるもので、重量あるパネルの効率的な取り付けを実現。6月末までで約900枚の設置が完了した。

GRCパネルの木目が浮かび上がる


 躯体構築では基礎部から2階床まで高強度コンクリートを打設。竹蓋所長は「これほどの躯体を高強度コンクリートで打設した経験はなかった」とその規模の大きさを明かす。高強度コンクリートはポンプ車1台当たり200m3の打設が限界で打ち継ぎも90分以内と決まっていたため、工区を分割して着実に作業を進めた。さらに打ち継ぎまでの時間を現場で表示し、見える化により周知するなど徹底した品質確保に努めた。打設後は左官押え完了後、即時に散水養生し、シートで覆うなどクラックの発生を抑えながら、躯体をつくり上げた。
 来館者を迎え入れる1階のコンクリート打放し柱には樹のイメージを強調する杉の木目が浮かび上がる。型枠に杉の板を重ねてコンクリートを打設し、杉の木目調の柱を構築した。杉の木が乾燥すると収縮し、隙間が生じてしまうため散水で乾燥を防止。脱型したコンクリートには杉の表情が鮮やかに表れており、竹蓋所長は「美しさが求められるため難しかったが、高強度コンクリートで密実にきれいな杉の模様が出た」と手応えを語る。
 地域の防災拠点でもあるオーテピアには、災害時の備えとして耐震天井や中間免震構造を採用。免震層の床には幅1800mmのPC(プレストレスト・コンクリート)梁14本を現場で構築。しかし、梁底と床との隙間はわずか85mmしかなく、通常の型枠では解体が困難なことが課題だった。そこで、砂とスタイロを下地にしてベニヤ板を乗せた型枠を作成し、コンクリートを打設。完成後は砂を飛ばすことで型枠の解体を可能とした。

18年夏の開館に向け工事が進む


 いくつもの困難な条件の下、さまざまな工夫を凝らし建設が進むオーテピアは2018年夏の開館を予定している。竹蓋所長は「所員・作業員が力を合わせて造った建物なので、多くの県民・市民の方に使ってもらい、にぎわいのある建物になってほしい」と願いを込める。
 高知県教育委員会発注の「新図書館等複合建築主体工事」は、高知県立図書館と高知市民図書館本館の合築による「オーテピア高知図書館」や「オーテピア高知声と点字の図書館」、プラネタリウムなどを備える「高知みらい科学館」として全国初の複合施設を建設するもので、規模はRC+SRC+S造地下1階地上9階建て塔屋1層延べ2万2797㎡。設計は佐藤総合計画・ライト岡田設計JVが担当。工期は14年7月5日から17年12月15日まで。

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