【記者座談会】「変革」「挑戦」で飛躍の年/時間外労働の上限規制 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】「変革」「挑戦」で飛躍の年/時間外労働の上限規制

◆「働きがい」を成長の原動力に

A ことしも一年が始まった。毎年のことだが、建設企業の経営トップによる年頭訓示は、この一年の企業としての戦略・方針だけでなく、時代の荒波にどう立ち向かっていくのかという経営トップの思いや覚悟のようなものがにじみ出る。その意味で2023年はどんなキーワードが浮かび上がってきただろうか。

B ゼネコン各社は、傾向として「変革」「挑戦」という言葉を使うトップが多かった印象だ。背景にはデジタル化の進展や脱炭素化の推進といった世界的なトレンドへの対応がある。持続的な成長を目指すための手段として、取り巻く環境の変化をビジネスチャンスに変えていく「チャレンジ精神」の重要性を説く経営トップも目立つ。

C DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)の取り組みなど、企業のビジネスモデルや産業構造も「変革」を迫られている。そうした時代背景を映し出しているということか。

D 働き方改革の延長線上で「働きがい」という表現も定着してきた。24年4月からの時間外労働(残業時間)の上限規制を見据える中で、社員のやりがいを引き出すエンゲージメントの向上や、組織として社員一人ひとりの多様性や価値観を認め合うダイバーシティ&インクルージョンの重要性を強調する経営トップも多い。

B あくまでも『企業は人なり』ということか。取り巻く環境が大きく変化している時代にあるからこそ、原点に立ち返って社員の「やりがい」「働きがい」を高めることで、社員一人ひとりに主体的な行動と積極的な挑戦を促す。それぞれの社員の成長を、企業としての成長の原動力につなげていこうという思いが見て取れた。

規制クリアへ、仕上げの1年

5日に東京都港区の東京プリンスホテルで開かれた建設業関係11団体の新春賀詞交歓会。時間外労働の上限規制への対応が大きな関心事になっている

A ところで5日に東京都港区の東京プリンスホテルで日本建設業連合会など建設業関係11団体の新春賀詞交歓会が開かれたのを皮切りに連
日、多くの業界団体が賀詞交歓会を開いているね。ことしの雰囲気はどうかな。

B やはり最大の関心事は時間外労働の上限規制への対応で間違いないだろう。ゼネコン各社の経営トップも危機感を隠さない。“仕上げ”の1年となるだけに、規制をクリアするためにあらゆる手段を講じていく必要がある。

D 設備工事各社も焦点となっているのは働き方改革だ。現段階で時間外労働の上限規制に対応できている企業はごくわずか。大半は道半ばという状況にある。特に設備工事業がサブコンの立場で現場に入ると、元請けではないため、残業時間の削減や休日確保のためのグリップを効かせるのが難しい。ゼネコンと一体になって発注者の理解を得ながら取り組みを進めていくことが欠かせない。

A 既に適用対象である建設コンサルタントはどうかな。

C 働き方に関しては、コロナ禍に伴って一気に進んだテレワークやオンライン化を緊急避難的な措置から恒常的な制度として組み込む動きが目立つ。多様な働き方を柔軟に受容し、より選択肢を増やしている。健康経営、ウェルビーイング経営を掲げる企業も多い。

B 多様化・複雑化する社会課題への対応が経営戦略のポイントになっているね。

C 従来からの基幹事業を着実に伸ばしながら、将来に向けた新たな柱となる事業領域を確立しようという構図自体は変わらないが、カバーする領域はより広がっている。これまでの受託型による部分最適ではない、全体最適を目指したソリューションの提供が求められているだけに、さまざまな形での外部連携に従前以上に積極的に取り組む姿勢が鮮明になってきた。

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