【"ワンオペ小規模土工"を構想】ナガヤス工業 大根田長政社長に聞く | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【“ワンオペ小規模土工”を構想】ナガヤス工業 大根田長政社長に聞く

◆多様な人材が活躍する建設企業追求

 地域公共団体が小規模ICT施工の普及に手をこまねく中、それを現場で実践し続ける地域建設企業がある。埼玉県草加市に本社を置くナガヤス工業だ。同社は現在、チルトローテータ搭載型バックホウを使った“ワンオペ小規模土工”を構想するなど積極的な姿勢を崩さない。 大根田長政社長は「全ては担い手不足を解消するためだ」と言い切る。ICT施工について「将来的には誰でもできるようになるだろう」と見通す。
 
 大根田社長は大学卒業後、準大手ゼネコンやベンチャー企業勤務などを経て、30歳の時に父親が1976年に創業したナガヤス工業に入社した。主に県市の工事を受注している。49歳となった今でこそ24人の社員とともに安定経営を実現しているが、道のりは平たんではなかったという。
 「本当に経営が苦しくて、もうけようというより、なんとか普通に暮らしたいという思いが強かった」と振り返る。入社当時は社員数10人弱の家族経営で、地元の建設業界に古くからの商慣習が残る中、もがき続けてきた。

執務室の大型モニターに現場のライブ映像やCIMデータを表示し、情報を共有している(左は大根田社長)

 だが、業務のデジタル化に少しずつ取り組み、2016年度に始まったi-Constructionと歩調を合わせるようにICT施工にかじを切った。
 自動追尾のトータルステーション(TS)を手始めに、建設機械に後付けするマシンガイダンス(MG)、ライブカメラなど矢継ぎ早にICT機器を導入した。ハードに限らず3次元起工測量や3次元設計データ作成も自社でこなす態勢を構築している。
 地方公共団体の特に小規模な都市土木で、ICT施工の適用が難しいとする声が相次ぐ中でも、担い手不足に対応するため、工事のデジタル化が不可欠とのスタンスで取り組んでいる。

 「人口が減っている。従来と同じやり方では人数は確保できない。仕事そのものを変えなければならないことは明らかだ」と断言する。
 しかし、ICT施工の導入が利益に直結するわけではない。「正直、金額が合っていない部分はある」と明かすが、「そろばんから電卓に変わったように、こうしたタイミングは必ず訪れる。先に触れておいた方が有利だ」と話す。

 国土交通省のホームページで全体の流れをつかみ、民間企業が公開する情報のチェックも怠らない。手が出せる最新機器があれば、いち早く導入に踏み切る。こうした積極姿勢が話題を呼び、大手テレビ局の報道番組に取り上げられた。本来の目的である担い手の確保にも一役買うなど副次的効果をもたらした。
 ICT機器は「ざっくりとした使い方でもいい」と考えており、「ちょっとした掘削作業にもMGバックホウが有効だ」と話す。発注者やメーカーが示すICT機器の使い方にとどまらず、自由な発想で使いこなすことを重視する。

 「体力と根性がなくても働ける就労環境を整備する必要がある」と強調する。空調が効いた場所で仕事ができるように、自社保有建機のキャビン(運転室)化を進めている。さらに「小規模土工で人力作業をゼロにしたい」と考えており、現在、ワンオペによる小規模土工の開発・導入も検討している。バケットを自在に動かすことができるチルトローテータ機能を持つバックホウとICT技術を組み合わせ、手元作業を極力減らすことを計画している。

 ICT施工が一般化した後の建設業界は「本当の技術力を持った会社だけが生き残る時代が来る」と考える。だからこそ、デジタル化によって生まれた余裕時間を新たな挑戦のために活用しているという。「その人にしかできない仕事ができるようにしたい」と力を込める。これからも多様な人材が活躍できる地域建設企業を追求していく。



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