【記者座談会】建設業22年労災速報/日本版セントラル方式確立 | 建設通信新聞Digital

5月13日 月曜日

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【記者座談会】建設業22年労災速報/日本版セントラル方式確立

◆死傷者は2年連続で増加

A 2022年(1-12月)の労働災害発生状況がまとまったね。

B 1月10日時点の速報値で、建設業の死亡者数は前年同期比(前年同時点比)3.3%減(9人減)の265人、休業4日以上の死傷者数は6.7%増(988人増)の1万5884人だった。死亡者数は2年ぶりに減少したものの、死傷者数は2年続けて増加している。

C 確定値は5月をめどに公表する。速報値は確定値が出るまでに3回示される。過去の傾向から、速報値は確定値と比べ1月は9割程度、2月が95%程度、3月が約98%の人数となる。

D 近年の確定値までの推移を踏まえると、22年の死亡者数(確定値)は280-285人程度と推計される。18-22年度の5年間を計画期間とする第13次労働災害防止計画(13次防)では、「死亡者数を17年と比較して22年までに15%以上減少」させることを建設業の目標として定めている。つまり22年の死亡者数を274人以下に抑えることだが、目標の達成は厳しいとみられる。死傷者数の確定値は1万7000-1万7200人程度と見込まれ、仮に1万7000人台となれば、14年の1万7184人以来、8年ぶりとなる。

B 総じてみれば、建設業の労災発生数は、建設産業界の労災防止への取り組みによって、中長期的に減少傾向が続いていたものの、その減少傾向にブレーキがかかっているといえる。建設業の労災で死亡者数の約4割、死傷者数の約3割を占める「墜落・転落」災害を一層減らすことが欠かせないね。14次防(23-27年度)でも、建設業の数値目標を「墜落・転落災害防止のリスクアセスメントに取り組む建設業の事業場割合を27年までに85%以上」(アウトプット指標)に「建設業の死亡者数を27年までに22年と比較して15%以上減少」(アウトカム指標)に設定する予定だ。

建設業の労災発生減少には墜落・転落災害防止対策の強化が欠かせない(写真と本文は関係ありません)

洋上風力発電の調査対象区域を初選定

A 話は変わるけど、50年カーボンニュートラルに向けて再生可能エネルギーの主力電源化が進む中、洋上風力発電では日本版セントラル方式の確立に向けた動きが活発化している。

E 洋上風力発電に関する官民協議会が20年にまとめた『洋上風力産業ビジョン(第1次)』では、案件形成の政府目標として30年までに1000万kW、40年までに3000万-4500万kWを掲げている。この実現には継続的な案件形成が不可欠だが、現状では複数の事業者が同一海域で類似した現地調査を実施するなど非効率な状況にある。そこで、案件形成の初期段階から政府が主導的に関与し、必要な調査を実施する日本版セントラル方式の確立が求められている。

F 1月に経済産業、国土交通の両省は23年度の調査対象に北海道の岩宇・南後志地区沖、島牧沖、檜山沖の3区域を選んだ。都道府県からの情報提供を基に第三者委員会が決めた。日本版セントラル方式の調査対象区域の選定は今回が初めてとなる。調査はエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が実施する。

G 日本版セントラル方式の運用方針や現地調査の基本仕様を定めるための議論も進んでいる。両省の合同会議で示された現地調査の基本仕様案では、洋上風力発電設備の基本設計に必要となる対象区域の風況、海底地盤、気象海象の各調査に関する具体の要求水準などを定めている。調査結果は再エネ海域利用法に基づく発電事業者公募の参加者に提供する。

E 合同会議に示したイメージによると、調査開始から3年後の発電事業者公募と選定を見込んでいる。今後の動向に注目したい。

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