【オルツの建築GIJIROKU】建築業界の議事録を自動作成/AIで文章をパーソナライズ | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【オルツの建築GIJIROKU】建築業界の議事録を自動作成/AIで文章をパーソナライズ

◆オルツ代表取締役 米倉千貴氏インタビュー/専門用語を認識、労力7割削減/大手から中小建設業まで導入

 パーソナル人工知能(P.A.I.)、AIクローンなどの革新的技術の研究開発で注目されるオルツ(東京都港区、米倉千貴代表取締役)は、建築業界向けの議事録自動作成ツール『建築GIJIROKU』を提供している。建築分野の膨大な専門用語や独特な言い回しに対して98%を超える音声認識精度を実現するとともに、議事録作成の労力を7割削減するなど大きな効果を出している。「非創造的な仕事は自動化し、その人にしかできない仕事の価値を最大化する環境づくりに貢献したい」と語る米倉千貴代表取締役に開発の経緯や将来のビジョンを聞いた。

オルツ代表取締役
米倉氏

 同社は、パーソナル人工知能をはじめ、人が話し掛ける質問にAIが正確かつ自然な文章で受け答えする対話エンジンや音声認識技術などを研究開発するため、米倉代表が2014年に設立したディープテック(社会課題の解決にインパクトを与える潜在力のある技術)企業だ。その研究過程で、音声認識技術から派生したSaaS(クラウドサービス)型議事録自動作成サービス『AI GIJIROKU』を20年1月にリリースし、わずか3年弱で約6000社が導入する国内最大規模の議事録サービスに発展した。業種別強化音声認識エンジンも独自開発し、各業種の専門用語を事前にAIが学習した上で『AI GIJIROKU』を利用できるようにした。

 特に建築分野は、IT、教育、製薬と並ぶ音声認識の難易度が高い業種であり、エラー率も高いため、建築業界向けにカスタマイズした『建築GIJIROKU』を21年10月にリリースした。汎用文字起こしアプリに比べ、エラーの割合を3分の1程度に減らす高精度の音声認識機能が高く評価され、『AI GIJIROKU』を導入する企業の10%は建築業が占める。大手ゼネコンから中小、小規模企業まで幅広く導入している。

◆対話エンジンの技術を議事録ツールに転用

パーソナライズ機能のイメージ


 キーワード検索や文章作成を革新する技術として開発競争が激化する対話エンジンだが、同社が研究開発する中でポイントになったのが、日常会話で使う自然言語処理のための音声認識技術だ。
 例えば、対話エンジンを搭載したロボットが会話するときは、まず人が話した内容を音声認識技術で全てテキストデータに変換し、その内容を認識する。その上で、対話エンジンもテキストで回答を生成し、音声合成システムを使って人に回答する手順を踏む。

 米倉代表は「開発当初、発生したエラーの原因を調べると、対話エンジンの精度は良いが音声認識にエラーが生じることが分かった。精度を上げるには話者の特性を分析し、その人の仕様に合わせる必要がある。そのため、少量のデータを効率的に学習し、パーソナライズする音声認識技術を開発した。それにより対話エンジンの精度も大きく向上した」と説明する。
 このパーソナライズ音声認識技術を議事録作成に転用したところ、非常に高い精度を実現できた。AIの技術発表会でも大きな反響を得られたことから「この技術を使いやすくして一般の人にも届けたい」と考え、SaaSプロダクト化し、『AI GIJIROKU』としてリリースした。

◆AI要約機能を2月にリリース

 『AI GIJIROKU』の具体的な機能として、会議の内容をリアルタイムで文字起こしするほか、声紋認証を使い最大100人まで話者を分離して認識できる。録音データを取り込んで短時間でテキストデータに変換することも可能だ。ビデオチャットアプリ上で会話内容を認識し、字幕を出せるほか、テキストを即座に35カ国語に翻訳できるため、オンライン国際会議での需要も高い。
 文字起こししたテキストは、時間軸で自動的に画面に表示される。文章を修正する場合は、該当個所をクリックして音声を聞き直し、手動で変換する。パーソナル人工知能が変換した内容を学習し、さらに精度を高める。

 2月には、最新の「AI要約機能」をリリースした。同社の大規模言語処理モデル「LHTM-2」を実装し、議事録編集作業の85%を効率化する。「清書機能」も3月にリリースした。さらに、声紋から発病を検知する医療向けの技術も開発中で、HR(人的資源)分野に活用する。「社員の健康状態を簡単に評価でき、現場の安全・安心の向上にも応用できる」と力を込める。
 法人プランは100アカウント、1000時間利用を含めて月額20万円(税込み)で提供している。

AI要約デモ画面


◆AIクローンの開発が最終目標

 同社は対話エンジンやパーソナル人工知能の研究過程で『AI GIJIROKU』をはじめ、『AIコールセンター』などの製品を開発してきたが、最終的な目標はAIクローンの開発にある。現在は米倉代表のクローンをつくり、日々の生活やコミュニケーションの情報をデジタル化して学習させている。「質問に対して自分そっくりの回答をするようになっている。将来は判断まで代行する分身のようなAIクローンをつくりたい。当社にはそうしたことをやりたいスタッフがたくさん集まっている」というように、現状は通過点であり、より大きなゴールを目指している。

 技術の進歩は加速しており、「AIの登場で非創造的な仕事はどんどん自動化し、価値が低下していく。その代わりに『その人にしかできない仕事』の価値が高くなる。そうした人が集中して仕事をし、生産性が上がる環境をつくることが重要であり、社会的に意義のあるテクノロジーの使い方だと思う」と先を見据える。

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