【記者座談会】東日本大震災から12年/建設産業の23年度採用状況 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【記者座談会】東日本大震災から12年/建設産業の23年度採用状況

◆被災地はフロンティア、新たな人呼び込む

A あす11日で東日本大震災から12年になる。被災地の現状や課題について話し合おう。

B 福島県では、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う中間貯蔵事業や廃炉に向けた作業が続いているが、被災3県(岩手・宮城・福島)とも基幹インフラの整備や、復興まちづくりはおおむね完了したとみていい。

C ハード整備は終わったが、課題はまだある。その一つが人口減少だ。岩手県陸前高田市では、防災集団移転促進事業による高台への住宅団地整備を進めたものの、住宅再建の意向を変えた被災者が多く、各団地に空き区画が生じている。

D 避難先や仮住まいでの生活が長くなり、そこで生活基盤が出来上がっているため、震災前に住んでいた街に戻れない人たちが多いのではないか。戻ったとしても新たな生業(なりわい)を得るのは難しいと思う。

B 元の住民を呼び戻すための努力も大切だが、被災地外から新たな人々を呼び込む取り組みが求められる。被災地をフロンティアと捉え、地域住民を巻き込みながら新しいアイデアをもとに事業を展開している人たちがいる。彼らの成功体験を積極的に情報発信していくべきだ。

A 交流人口の拡大も重要だ。単なる観光ではなく、震災遺構や復興祈念公園などを巡り、津波の破壊力や災害の恐ろしさを実感してもらうと良い。特に小中学生や高校生などの若い世代が見れば防災教育になる。

C コロナ禍で低迷していた旅行需要が戻りつつあり、インバウンド(訪日外国人客)の増加も期待できる。世界中の人たちが東北の美しい自然や食文化を楽しみながら、命の守り方を学び、それが結果的ににぎわいの創出につながることを期待したい。

高田松原津波復興祈念公園を見学する子どもたち。災害の恐ろしさを実感することが防災教育につながる

企業は積極姿勢も採用活動「苦戦」

A ところで、もうすぐ多くの新入社員が建設産業の門を叩く。当社が大手・準大手ゼネコン、建築設計事務所、建設コンサルタント、道路舗装会社、設備工事会社、メーカーを対象に実施した「人材採用」調査の結果から、2023年4月採用にはどんな傾向があるだろうか。

E 全体感としては、より優秀な人材を安定的に確保したい企業側が採用活動に積極的な姿勢を示している。その一方で、相当数の企業が「最終的に予定枠を確保できなかった」と回答しており、採用に苦戦している印象が強い。

A いわゆる人材獲得競争が続いているということかな。

F 大手・準大手ゼネコン31社への調査によると、23年4月の新卒採用は全体の半数を超える16社が前年度比で人数が増えている。31社の合計人数も3.9%増の3634人と人数自体は決して減っていないが、採用活動に対するコメントを見ると、企業側にとって厳しい採用環境になっているようだ。

A 具体的にはどんなコメントがあったの。

E 複数の企業から「全体的に応募者が減少した」「(応募者の)母集団の形成に苦戦した」という声が寄せられている。「就職活動(選考)の早期化が顕著になった」ことによって「例年よりも複数の内定を持つ学生が多かった」「内々定後の辞退者が多かった」「内定辞退が増加している」との声もあった。

A 中長期的な採用計画は回答のあった30社の全てが「増やす」「維持する」と回答しているようだね。

E 基幹となる人材を安定的に確保するために新卒採用に注力する一方で、近年は働き方に対する意識の変化によって人材の流動化もキーワードになっている。「(年齢構成で)人数の少ない世代を中途採用で補充する」との声もあり、即戦力となる中途採用への期待がより高まっていくのかもしれない。

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