【レジリエンス社会へ】東京都 環状七号線地下広域調節池 | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

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【レジリエンス社会へ】東京都 環状七号線地下広域調節池

合成セグメント活用 局所的豪雨に効果

 東京都は、100年先も都民が安心できる都市の実現を目指し「TOKYO強靱化プロジェクト」に取り組んでいる。このうち風水害対策では、台風や集中豪雨による水害から都民の生命と財産を守るため、環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事を進めている。完成後は既存の白子川地下調節地、神田川・環状七号線地下広域調節池とシールドトンネルで連結し、国内最大の広域地下調節池として機能を発揮する。

 都の水害被害は、1993年の台風11号で総雨量288mmを観測し、約3000棟の家屋が床上・床下浸水した。2005年9月に発生した集中豪雨では、1時間当たり112mmの雨量を記録し、約6000棟が床上・床下浸水の被害を受けた。

 都は台風や集中豪雨による水害を防ぐため、河川の護岸や調節地整備などの治水対策を推進している。19年の台風19号による豪雨では、神田川・環状七号線地下広域調節池が49万m3の雨水を貯留し整備効果を発揮した。

 都によると、80年から89年までに発生した1時間当たり50mmを超える雷雨性降雨は14件だったが、00年から09年までの期間は約3倍の40件に増加している。14年には1時間当たり降雨量の目標整備水準を区部で75mm、多摩部は65mmに引き上げた。環状七号線地下広域調節池は、75mmに引き上げた後の初弾事業となる。

整備中の地下トンネル式調節池


 環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)は延長5.4㎞、貯留量約68万m3で、地上から52.4mの深さとなる。25年12月の完成を目指す。施工は大成建設・鹿島・大林組・京急建設JVが担当している。工事場所は中野区野方5の発進立坑から練馬区高松3の到達立坑まで。シールドマシンは約400mほど掘削した。

 完成後は既存の調節地と連結することで、 総延長は13.1㎞となる。 計140万m3を超える貯留能力を確保する。都第三建設事務所の向山公人工事第二課長は 「白子川、石神井川、妙正寺川、 善福寺川、神田川の5河川、 計3流域にまたがり、 貯留量を複数の流域間で相互に融通することができる。 1時間当たり75mmの降雨に対応するほか、 同100mmの局所的かつ短時間の集中豪雨にも効果を発揮する」 と話す。

既存調節池と連結し、国内最大の広域調節池となる


 通常のトンネルと異なり、内側に入った水の圧力もかかるため、トンネルの壁となるセグメントは鋼材とコンクリートが一体となった合成セグメントを使用する。向山課長は「簡単に調節地をつくり替えることはできない。強度な材質を採用し、100年以上使えるつくりとした」 と説明する。

 発進立坑は環状7号線付近にあり、車の交通量も多いことから、安全への意識を徹底する。環七地下調節地作業所の田中敦作業所長(大成建設)は「大規模な現場は事故が発生した場合の影響が大きい。繰り返し作業が形骸化しないように、安全への意識を常に持っている」と話す。都も月1回以上の安全パトロールを実施するなど、受発注者一体となって安全で質の高い工事を進めている。

 環状七号線地下広域調節池は今後、22年度に事業化した目黒川流域調節池(仮称)と連結し、総容量約190万m3の調節池として整備する。相互融通機能が拡充され、豪雨への対応力が目黒川から白子川までの4流域に広がる。目黒川流域調節池は将来の地下河川化も見据えて検討を進める。

 都が策定した「TOKYO強靱化プロジェクト」では、40年代までの強靱化を目指し、風水害や地震、火山噴火などの五つの危機に対する中長期の施策をまとめた。総事業規模は15兆円。30年度までの完成を目指していた150万m3の新たな調節池整備は、目標達成時期を前倒しする方針だ。

400mまで掘削を進めたシールドマシン



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