【レジリエンス社会へ】東京都知事 小池百合子氏 | 建設通信新聞Digital

5月13日 月曜日

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【レジリエンス社会へ】東京都知事 小池百合子氏

災害から都民の命と生活守る/100年先も安全な首都・東京に
 「あらゆる災害で“これまで経験したことがない”という言葉が使われている。都民の命と生活を守るため、都政に求められる役割を果たす」。東京都の小池百合子知事は、風水害をはじめ、頻発・激甚化する自然災害に対し、こう力を込める。関東大震災から100年となる中、切迫する首都直下地震への備えや100年後の安全を目指す「TOKYO強靱化プロジェクト」など東京都の取り組みを小池知事に聞いた。

小池百合子氏

 関東大震災の発生翌日、内務大臣に就任したのが7代目の東京市長を務めた後藤新平だ。単なる復旧ではなく、「新しい都市を造る復興」をコンセプトとし、幹線道路や公園など東京都の都市基盤の礎を築いた。「昭和通りや明治通りは当時としては破格の道路幅で計画されている。100年後を見据えた復興事業で、先のモータリゼーションなどを考えられていた」という。

 100年先の安心を目指し、2040年代に目指す東京の姿とその実現に向けた道筋を明らかにする「TOKYO強靱化プロジェクト」を22年12月に策定した。総事業規模は15兆円で、このうち6兆円を今後10年間で投資する。「風水害、地震、火山噴火、電力・通信の途絶、感染症の五つの危機を想定し、複合的な災害が発生した場合でも壊滅的な被害となることを何としても防ぐ」と決意を示す。

 プロジェクトで想定する危機の中で、特に災害が頻発・激甚化しているのが風水害だ。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書では、気候変動の影響により気温が2.0度上昇すると、降雨量は現在の1.1倍となり、海面の平均水位は2100年には最大約60cm上昇すると見込む。災害の激甚化は「今はまだピークではない」と気を引き締める。

 風水害の対策として都は、地下調節池の整備を推進している。21年度末までに12河川27カ所で合計約264万m3分の調節池を稼働させた。今後は「地下河川を含めた新たな整備手法を検討する」考えで、さらなる整備を目指す。川上から川下まで「水は全てつながっている」だけに、高潮対策では防潮堤やまちづくりと一体になったスーパー堤防、水門の整備など場所に応じた対策を進める。このほか、多摩地域と島しょ地域を中心に、砂防などの土砂災害対策にも注力する。

 切迫する首都直下地震に対する備えも急ぐ。「住宅の耐震化や木密地域の不燃化、無電柱化などに取り組んだ結果、22年に見直した首都直下地震等の被害想定は、12年と比べて3割から4割ほど減少した」と胸を張る。一方、「それでも想定される被害が甚大であることに変わりはない」との認識の下、対策を一層進め、人的・物的被害をおおむね半減させることを目指す。

 災害対策にはハードだけではなく、ソフト対策も重要だ。今年5月に修正した東京都地域防災計画震災編では、「家庭での防災行動や地域での防災活動が鈍化傾向にある」ことなどを課題に挙げており、「自助・共助の取り組みを進め、テレワーカーの増加などライフスタイルの変化に伴う対策を講じる」方針だ。「関東大震災から100年を契機にハード・ソフト両面で災害対策を考え、そして備え、100年先も安全な首都・東京をつくる」と強調する。



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