【和菓子からガラス製品の可能性を探る】中日ステンドアート | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【和菓子からガラス製品の可能性を探る】中日ステンドアート

伝統的な食文化をガラスに落とし込む「GABEI 画餅」


 オーダーメード専門でインテリア・建築に特化した装飾ガラスの提案、制作を手掛ける中日ステンドアート(愛知県岡崎市、溝口禄章社長)は、今年6月に「装飾ガラスデザイン研究所」を立ち上げた。これまでジブリパーク「ジブリの大倉庫」(愛知県長久手市)などの展示施設、シェラトン都ホテル東京(東京都港区)、宝塚ホテル(兵庫県宝塚市)などの宿泊施設、ルイ・ヴィトン「タウンハウス」(ロンドン)などの店舗といった多くの空間で装飾ガラスを手掛けた実績を基に、「自然や文化、私たちにとっての大事を閉じ込めてみる」ことを掲げ、装飾ガラスの新しい意味や表現、在り方の可能性を探る。

ことし6月のインテリアライフスタイル2023での展示


◇装飾グラス技術の腕試しが始まり

 同社は1981年の設立以来、学校や官公庁向けのステンドグラスなどで技術を培ってきた。その腕試しという位置付けで、新たなガラスの制作物について約2年前に検討を開始。ブランディングに関するコンサル会社から助言を受けて制作物の方向性を検討し、同研究所の発足に至った。

 現在、研究所では「GABEI 画餅」「ON THE LAKE」「RURI to ISHI」という3プロジェクトを進めている。一般販売や、ホテル、レストランといった高い意匠性を必要とする施設のインテリアなどに向けてガラスの提案拡大を目指す。企業や個人クリエーターとの協業も視野に入れる。

◇食べられないガラスで表現する食文化

 GABEI 画餅のテーマは、「絵に描いた餅」のように食べられないガラス製の和菓子オブジェを通して、伝統的な食文化をガラスに落とし込むこと。キルンキャストやキルンフュージング、バナーワーク、吹きガラス、積層ガラスなどの装飾ガラスの技法を使い分けて、さまざまな和菓子のつやや風合い、透明度を再現。初弾では栗まんじゅう、あんころ餅、練り切り(手まり・菊)、栗きんとん、ういろう、水無月(みなづき)、豆大福、水まんじゅうを制作した。

ON THE LAKE


◇自然を記録する「媒体としてのガラス」

 ON THE LAKEは、世界各地のさまざまな湖の表情をガラスに閉じ込めて自然の美しさを表現することがコンセプト。景色などを記録する「媒体としてのガラス」の可能性を探る。

 初弾として北海道の糠平湖をテーマに、アイスバブル(湖面の凍結した部分に閉じ込められた気泡)を再現した「ICE BUBBLES」、透明度の高いガラスの中に白いもやを重ね氷の亀裂を表す「ICE CRACK」の2種を制作。貴金属店のアクセサリートレーや店舗什器などの活用を想定する。
 
 
 
 

RURI to ISHIのデザイン例


◇鏡や太陽光パネル廃材を大理石に

 ほかの2プロジェクトが、和菓子や氷といった食べたり溶けたりして手元にとどめにくいものをガラスでとどめることを志向しているのに対し、RURI to ISHIでは、ガラスと石という異なる素材の組み合わせや環境配慮に着眼した。ステンドグラスの端材を加工してテラゾー(人造大理石)にする。端材のほか、パートナー企業から廃棄となる鏡、太陽光パネルなども譲り受けて使用する。テラゾーは家具や内装建材への活用を想定している。

 ステンドグラスの制作過程では、最終的に使用するガラスより廃材になってしまうガラスが多い場合もある。さまざまな端材などを混ぜて新たなデザインの可能性を探る。ガラスの大きなかけらは模様やロゴ、サインを表現するよう配置したり、ランダムに配置することもできる。意匠性とサステナビリティー(持続可能性)への配慮の両面から提案拡大を図る。

 

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