【日本スタートアップ大賞2023国交大臣賞】ANDPADが建設DXの象徴に | 建設通信新聞Digital

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【日本スタートアップ大賞2023国交大臣賞】ANDPADが建設DXの象徴に


 クラウド型建設プロジェクトサービス『ANDPAD』を開発・運営するアンドパッドは、経済産業省が主催する「日本スタートアップ大賞2023」の国土交通大臣賞(国土交通スタートアップ賞)を受賞した。建設業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の急速な普及を背景に、今年度に新設された国土交通大臣賞を受賞したことで、建設DXの象徴的な企業として評価された形だ。人手不足や働き方改革などの課題解決に向けた技術開発を加速させる稲田武夫社長に、製品に込めた思いと今後の展望を聞いた。 「幸せを築く人を、幸せに。」をミッションに、現場の効率化から経営改善までの機能をワンパッケージで対応する『ANDPAD』。2016年にローンチして以来、着実にユーザーを増やし、利用者数17.3万人、累計ユーザー数44.7万人を超え、名実ともに建設業界を代表する施工管理プラットフォームに成長した。

稲田武夫社長


 29歳で起業した当初は現在のBtoBではなく一般向けのリフォーム会社検索サイトの運営から始まった。稲田社長は「建設業のデジタル化が進むことを確信し、3年ぐらいは自由なスタンスで建設業のさまざまなデジタル化に取り組んでいた」と振り返る。

◆デバイス革命が追い風

 検索サイトを運営する中でたくさんのリフォーム会社に出会い、ホームページの作成、ウェブ集客や顧客管理などのさまざまな支援を手掛ける中、スマートフォンを使った現場の情報管理アプリの開発を依頼されたのが、ANDPAD開発のきっかけとなった。「現場監督の仕事があまりにも忙しいことを知り、自然な流れで施工管理アプリを開発することになった」という。

 その頃のリフォーム工事の監督や営業マンは、たくさんの現場を掛け持ちし、多くの時間を移動に割いていた。協力会社に一つひとつファクスを送るなど非効率な業務が多く、「ITを利用すればもっと心地よく働けることがたくさんある。私たちがもう少し貢献できる仕掛けをつくれるのではないか」と考えた。

 折しも15年ごろは建設現場でもスマートフォンの利用が広がる時期と重なる。「職人さんもスマートフォンがあればデジタル空間につながれる。大きなデバイス革命が起きた」ことが追い風となった。

スマートフォンなどモバイル端末の普及に合わせ導入が増加した


 開発したアプリは、住宅のリフォーム工事を想定したこともあり、料理レシピを代表するアプリとなったクックパッドにあやかって『リフォームパッド』と名付けた。徐々に戸建ての新築、分譲住宅へとユーザーが広がり、名称を『ANDPAD』に改称。20年ごろには専門工事業や地場ゼネコンのユーザーが増え、現在は非住宅分野のユーザーも急増している。

◆汎用性と専門性併せ持つ

「お客さまからの声を大切にして、要望を元に開発してきた」と言うように、リフォーム工事の時代から監督や職人の要望に合わせて機能を開発し、一つずつノウハウを積み上げ、現場の誰もが使える汎用(はんよう)性と鉄筋や解体など各業種の専門性を併せ持つ唯一無二の施工管理アプリとなった。

 ユーザーの利便性を高めるため、現場のデータを、原価管理などの経営管理に連動させたのも特徴だ。「工程に合わせて見積もり依頼、発注、納品、請求などを一元的に行うなど経営管理に活用できる」ほか、インボイス制度(消費税の適格請求書等保存方式)などの法改正に完全対応し、商取引のペーパレス化を実現した。「施工と経営管理のDXに安価な費用でスタートできる」ことへの評価も高い。

◆顧客と議論し製品化へ

 こうした機能開発を支えるのが、600人を超える社員たちだ。スタートアップの中でも高い開発力を誇る数百人規模のシステム部門を擁するとともに営業部門、サポート部門の社員が毎日のように顧客を訪れ、業務のデジタル化について議論し、製品化につなげてきた。「建設業界出身者も在籍し、多くのナレッジを蓄積している。私より顧客のことをよく知る社員が増え、それぞれの得意先に適したプロダクトを自発的に生み出す組織が醸成されてきた」とし、稲田社長の創業時のマインドが浸透したことを実感する。

 目標は「建設業全体に必要不可欠な企業になること」だ。産業がDX化する上で、大きなデジタルカンパニーが誕生するのは世界的な潮流であり、同社もその高みを目指す。特に建設業界の大部分を占める中小企業は大手ゼネコンのように自力でデジタル化するのは難しいため、「われわれが代わりに開発することで多額の投資をすることなくDXできる。それができる企業であると信用してもらえるよう、今後も一歩ずつ成長したい」と力を込める。

 そのためにも、AI(人工知能)やBIM、点群など最先端のテクノロジーを常にキャッチアップし、最適なプロダクトを開発する。「良い仕事をする人が高い報酬を得て良い環境で働ける産業にすること」が事業の根底にあり、「DXをする際に最初に相談される企業になり、建設業界で働く人が活躍できるよう貢献したい」と意気込む。

 

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