【BIM/CIM原則化元年①】インフラデータの高度利用へ実現する建設イノベーション | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【BIM/CIM原則化元年①】インフラデータの高度利用へ実現する建設イノベーション

 国土交通省の直轄土木事業におけるBIM/CIM原則化が2023年度から始まった。本年を“原則化元年”とし、BIM/CIMの3次元モデルや属性情報など各種データの高度利用を進め、受発注者の総合的な生産性向上を目指す。本特集では各地方整備局の原則化の方向性を紹介するとともに、団体、建設コンサルタント、ゼネコン、ソフトウエアベンダーなどの46人のキーマンにBIM/CIMの今後の在り方について提言してもらった。従来の建設生産システムにイノベーションを起こすための“コア技術”となるBIM/CIMの最前線と、今後を展望する。
建設業の持続的発展に寄与/林正道 国土交通省技術審議官に聞く

――BIM/CIM原則化の実施状況は
 「建設業界の人手不足による従事者減少を前提にすると、省人化と効率化の二段構えで働き方を改革することが不可欠であり、BIM/CIMは両方に役立つ。その意味で今年度から始めたBIM/CIM原則化は重要であり、将来に向けて大きな一歩を踏み出したと言える」

林正道 国土交通省技術審議官

 「初年度は、だれもが取り組むことのできる3次元モデルを活用した『可視化』を義務項目にしたが、それはBIM/CIMのほんの入口であり、その先にはデータ連携などで仕事を効率化する壮大な世界が広がっている。高度なデータ活用については、今年度も推奨項目を使ってどんどん挑戦してほしいと思う」

――導入の意義は
 「国土交通省は幅広い分野でインフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めており、その根幹をなすのがBIM/CIMだと考えている。デジタルデータを活用するに当たり、計画、設計、施工、維持管理まで連動し、測量会社、地質調査会社、建設コンサルタント、施工者など数多くの関係者が使うBIM/CIMはデータの基盤となる」

 「特に図面はわれわれ建設技術者にとって非常に重要な情報であり、それをBIM/CIMに置き換えることで仕事の在り方が大きく変わる。3次元化によりICT施工で建機が図面を読み込むことができるし、今後、自動施工や多様なロボティクスの導入を進める時もBIM/CIMの3次元設計データや属性情報が不可欠となる」

 「また、BIM/CIMとして図面や部材の情報をデジタル化すれば、データ連携が可能となり、設計や積算など業務ごとにデータを入力し直す手間がなくなるため、間違いも減る。その意味でもBIM/CIMは効果が高い」

――DXデータセンターの利用状況は
 「専門ソフトや高性能のパソコンを持たない受注者のためにBIM/CIMの作業環境を用意した。申し込みが増えたので、より快適な作業環境を提供するため、容量を倍増した。DXデータセンターを通じて専門ソフトを購入するユーザーも増え、受注者の意識の高さを感じており、滑り出しは順調だ」

 「一方で、BIM/CIMを使いこなせるか心配する受注者もいると思う。そうした企業をフォローし、だれもが活用できるようにするには、人材育成が重要になる。各整備局に人材育成センターを設置し、われわれの職員や自治体だけでなく、建設コンサルタントやゼネコンなど民間企業も研修できるようにした。BIM/CIMが普及すれば生産性も向上していく」

――建設業の将来は
 「業界全体でDXを推進したことで、十年前と現場のイメージは大きく変わったと思う。以前は、自然の中で一品生産する建設現場は工場のように機械化するのは難しいと考えられていたが、今は技術革新が進み、センサーで収集したデータを使った自動施工などが身近になってきている。BIM/CIMの原則化もあり、現場はオートメーション化に向けて大きな潮目を迎えている」

 「将来的には無人施工もどんどん広がり、働きやすく安全な現場が増えるだろう。その第一歩が今回のBIM/CIMによるデータ活用だ。建機やロボットの導入を進め、職場環境をより良くしていくことが、建設業の持続的な発展につながる」



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