【BIM/CIM原則化元年⑤】NEXCO中日本が考えるBIM/CIMの真の効果とは 技術本部高度技術推進部技術開発課専門副主幹(建設ICT担当) 石田篤徳氏 | 建設通信新聞Digital

5月16日 木曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM原則化元年⑤】NEXCO中日本が考えるBIM/CIMの真の効果とは 技術本部高度技術推進部技術開発課専門副主幹(建設ICT担当) 石田篤徳氏

個別から事業全体の最適化へ

 NEXCO中日本では、調査・設計から施工・検査、さらには維持管理・更新まで、全てのプロセスにICTを導入することなどにより、建設生産システム全体の生産性を向上させ、魅力ある建設現場を目指すという方針のもと、2017年度からCIMの導入検討に着手しております。その後、20年度にi-Constructionの導入展開に向けた基本方針を制定し、21年度からは各業界団体とともにi-Construction検討会を開いております。22年4月には3次元モデル作成暫定要領を公表し、25年度からのBIM/CIM原則適用開始を目標に各種施策を展開しており、現在はモデル事務所を設定して基準類の作成や必要な技術開発を進めております。

石田篤徳氏

 BIM/CIM導入の効果としては、まず「手待ち・手戻りの減少」が挙げられます。3次元モデルで事前に検証することで、現場での検討や手待ち、手戻りが減少するという効果が確認できています。設計や施工計画の段階で3次元モデルを活用して調査すれば、細かい部分にまで目が行き届き、現地の不整合が防げると考えています。2点目は「相互理解の向上」です。完成イメージや施工プロセスの事前共有により、受発注者間に加えて利用者、警察などの目線からも確認ができ、幅広い関係者間での相互理解の向上が期待できます。3点目は「安全性の向上」です。「安全を何よりも優先する」ことを企業理念に掲げる当社にとって、最も大きな効果だと考えています。ICT建機の導入によって重機周辺での測量や作業指示、作業補助が削減され、レーザースキャナーやドローンによる測量は急峻な足場での測量を減少させています。難易度の高い重機作業は事前シミュレーションによってリスクを抽出し、作業手順を確認することで安全性が向上しています。

 一方で、3次元モデル作成の負担や測量・設計・施工の各段階間での引き継ぎなどに課題があるほか、デジタルスキルの不足によって使いこなすことができていない場合もあります。工事・業務での個別最適の道筋は見えてきましたが、事業全体の最適化はこれからの取り組みです。

 BIM/CIMは3次元CADを使うことではなく、シームレスな情報共有の実現が目的です。建設事業をデジタル化し、デジタルデータを中心とした関係者間のコラボレーションを促進することが、BIM/CIMの本領と言えるでしょう。

 BIM/CIMには、役割の見直しによるフロントローディングや事業間の連携によるコンカレントエンジニアリングの実現といった効果が期待されています。そのためには、まず発注者の意識から変える必要があると考えています。役割の見直しについては、標準ルールの策定による各フェーズの役割の明確化やモデル作成基準の制定、設計テンプレートの提供による負担軽減などに取り組んでいます。事業間の連携については、どのような目的で3次元モデルをつくるのか明確にした上で発注することや、あらたな契約方式を採用して設計者と施工者が協力しあって業務を進められる体制の構築などを進めていきます。

NEXCO中日本における基本方針



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