【記者座談会】区分所有法改正のたたき台/群マネモデル自治体選定 | 建設通信新聞Digital

5月15日 水曜日

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【記者座談会】区分所有法改正のたたき台/群マネモデル自治体選定

◇適地確保へデベロッパーの関心高く

A 法務省が、マンションの建て替え決議の多数決要件を現行の5分の4以上から4分の3以上に緩和する区分所有法改正のたたき台をまとめた。2024年通常国会に改正法案を提出するようだが、今後、どんな影響があるの。

B 22年末のマンションストック総数は694万3000戸で、このうち築40年以上のマンションは125万7000戸(旧耐震基準ストック103万戸を含む)に上る。さらに32年末には260万8000戸、42年末には445万戸に達する。

C 23年3月時点のマンションの建て替え実績は、累計282件約2万3000戸で、進んでいるとは決して言えない状況だ。このうちマンション建替円滑化法による建て替えは114件を占める。ただ、マンションは個人資産の集合体であり、居住者の年齢もまちまち、居住者同士のコミュニケーションも希薄となると、マンション居住者の大多数の合意を得るというのは難しい。その要件が緩和されれば、マンション建て替えが一層進むことが期待できる。

B デベロッパーはいま、マンション建設用地の確保に四苦八苦している。特に価格が高騰する中で、価格上昇を許容できる富裕層のニーズに応えられる好立地は少なく、確保競争は熾烈(しれつ)を極めている。その中で、マンション建て替えに各社がかなり強い関心を示している。好立地に所在する老朽マンションを中心に、マンション建て替えが加速することはほぼ間違いない。

C ここ数カ月だけでも、マンション建替組合設立のニュースが増えていると感じる。東京都心を中心に土地代の上昇が続いているため、居住者が建て替えに踏み切りやすい環境ではないか。今後の住宅建設市場を下支えする起爆剤になれば良いね。

老朽マンションの建て替えがデベロッパーにとって好立地確保の手段になる

◇自治体の技術職員不足対応の“解”に

A ところで国土交通省が、地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の地方自治体への浸透に向け、公募していたモデル地域の初弾に40地方自治体11件を選定したね。群マネは、複数・広域・多分野のインフラ施設を“群”と捉えて地域でマネジメントするインフラメンテナンスの新しい考え方となる。どうやって群マネを実施するのだろうか。

D 複数自治体が連携してインフラメンテナンスを行う「広域連携」と、一つの自治体が多分野のインフラメンテナンスをまとめる「多分野連携(単独)」の2パターンが考えられる。広域連携は、都道府県がリードして管内市区町村と連携する「垂直連携」と、一つの市区町村が主導して複数市区町村の連携体制を構築する「水平連携」の二つに分類できる。

E 自治体は、北海道、秋田、滋賀、大阪、兵庫、奈良、和歌山、島根、広島、山口の10府県が選ばれている。このうち、兵庫県内5市町、奈良県内4市村、和歌山県内4市町、島根県内3市町、広島県内2町は、既に技術系職員数がゼロだ。発注者の技術系職員がいなければ、インフラメンテナンスが不十分になるだけでなく、そもそもインフラがなくなっていって地域の建設業が立ち行かなくなる可能性もある。喫緊に対応しなければならない目の前の課題という状況にまで追い込まれている。

D 今後、1-2年程度で群マネの計画策定と業務実施に必要な調査・検討・資料作成などを支援する。得られた課題や知見を基に25年度にも計画策定手引きをまとめ全国展開を図る。

E 自治体職員の不足を補う仕組みができれば、地域建設業の活躍の場や役割が広がることも期待できる。建設コンサルタント会社がさらに地域と密着した事業を展開する可能性も見えてくる。群マネの事例や知見が、職員不足に悩む発注行政も含めて自治体運営を良い方向へ導けると良いね。

 

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