【記者座談会】波乱の年開け、能登半島地震発生/年頭訓示にさまざまな思い | 建設通信新聞Digital

5月12日 日曜日

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【記者座談会】波乱の年開け、能登半島地震発生/年頭訓示にさまざまな思い

◇地域の守り手、その矜持が復旧支える

県道38号(輪島浦上線)輪島市門前町浦上付近の道路啓開作業状況(北陸地方整備局提供)


A 今年は波乱の幕開けとなった。元日に能登半島地震が発生し、甚大な被害が生じている。被害の全容は明らかになっていない。

B 被災地は3面を海に囲まれた半島で、数少ない陸路が土砂崩れなどで通行できないなど、地形やインフラ被害による影響が迅速救助や円滑な支援に立ちはだかった。地域や人々の生活の生命線となるインフラやリダンダンシーの確保、国土強靱化の重要性が改めて浮き彫りとなった。

C 今回は火事による被害も多かった。木造住宅の密集は、東京や大都市を中心にその解消を進めているが、地方都市も含めてまだまだ残っている。早急な再整備、解消が今後の課題となる。

D 家屋の倒壊が多かったのも特徴だ。今の時代に建物がこんなに倒れたことには驚いた。その中に新耐震基準を満たす建物があったかどうかも気になるが、どうやら新耐震基準導入後の建物でも被害が出ている話もあるようだ。

E 家屋倒壊の原因の一つとして、北陸地方に多い伝統的な重い瓦屋根が地震に弱かったという説やダメージの蓄積という説もある。

A 津波があったから東日本大震災と比べてしまいがちだが、震源地の近さや地震による海岸隆起など相違点も多い。使える港湾も少ないため復興のスピードなどを安易に比較しない姿勢も必要だ。

B 今回も建設産業が昼夜を問わず、道路啓開などの緊急復旧に尽力している。「被災者に迷惑は掛けられない」と、食料や燃料を持ち込み車中泊などで対応しているという。頭が下がる思いだ。

C 一方、現場からは「建設業の活動が一般には伝わらない」との声も漏れ聞こえてくる。地域の守り手として奮闘する姿を伝えるのは、われわれ報道の役割だね。

◇上限規制を新3K実現の好機に

A 2024年の幕開けといえば、建設各社のトップが年頭訓示で今年にかける思いを語っている。当紙では、1月5日付から10日付にかけて報じている。

B 今年の干支(えと)は、甲辰(きのえたつ)ということもあって、辰の「昇り竜」にあやかり、「飛躍の年」や「さらなる成長の年」にしたいなどの思いが並んでいるのをよく目にした。23年が創業100年などの節目の年となった企業からは、「新たなスタート」や「次の礎を築く」というような強い意志も感じられた。

C それと同時に多かった訓示の内容が、4月から建設業にも適用される時間外労働の罰則付き上限規制だ。特に、この対応については、設備工事業から不退転の決意を感じることができた。

D 設備工事業は、建築工事の後工程であるために工期のしわ寄せを受けやすく、長時間労働を是正しようとしても、自助努力だけでは乗り越えにくい難しい立場にある。それでも各社ともに、バックオフィスの強化やICTツールの活用など独自の対応には力を入れている。昨年末、設備工事各社のトップに話を聞いたところ、1年前よりは規制対応が進展している状況は感じ取れたものの、いまだ対応に苦慮している雰囲気をにじませる人もいた。

A 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、さまざまな苦難が増えた一方、テレワークやデジタル化などの流れが一気に加速し、そうした取り組みの定着につながった。今回の上限規制は、建設業にとって高いハードルではあるがマイナスではない。この難局を乗り越え労働環境を良くするための好機に変えて、給与水準上昇の流れとも相まって、新3K(給与・休暇・希望)の実現に拍車をかけてほしい。

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