【記者座談会】東京都が都市強靱化加速/建コン協ら被災状況把握に尽力 | 建設通信新聞Digital

5月13日 月曜日

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【記者座談会】東京都が都市強靱化加速/建コン協ら被災状況把握に尽力

◇眼前の課題対応、建設業担い手確保も

A 東京都が1日に発生した能登半島地震の被害を踏まえ、2024年度予算案での対策強化予算を積み増した。

B 被災地の惨状を目の当たりにし、これが東京でいつ起こるか分からないと強い危機感を抱いた都庁関係者も多い。地震発生から10日足らずでの表明は、機を見るに敏な“小池流”ともいえる。

C 今回の地震では広範囲にわたって通信途絶の状態が生じたほか、断水に伴うトイレ不足の長期化も課題として顕在化した。このため、都内の全市区町村と居住者がいる全ての離島にモバイル衛星通信機器を配備するほか、携帯トイレの備蓄拡充といった予算を追加計上した。

B 都はこれに先立ち、昨年暮れに「TOKYO強靱化プロジェクト」をアップグレードし、ハード・ソフト両面の施策を強化するため、総事業規模を当初の15兆円から17兆円へ2兆円増額することも明らかにしていた。このうち直近10年間で7兆円を投じる。24年度予算案には関連事業費7600億円程度を計上するとしており、まさに取り組み強化を加速することになる。

C 能登半島地震もそうだが、大地震発生時には道路啓開がまず求められる。これを担うのは言うまでもなく建設業の従事者だ。言い換えれば強靱で持続的な首都東京の実現には中長期的に建設業の担い手を確保していくことが不可欠ということになる。

B 都内で重機を保有・保管する企業が少ないという課題もある。都中小建設業協会も重機の置き場確保を課題と捉えており、行政に要望していく姿勢を示している。

C 課題は山積し災害リスクは高まる一方だ。実効ある対策をいかに効果的・効率的に実施できるか。官民の英知を結集することが求められる。

◇事前防災、防災DX実装も急務

A 先週は測量・建設コンサルタント関連団体の賀詞交歓会が相次いだ。話題は。

12日に開かれた建設コンサルタンツ協会関東支部の賀詞交歓会。約220人の参加者は事前防災の重要性を改めて確認した。


D やはり能登半島地震に集中した。被害の全容がいまだ見えない中で被災地の状況把握に全力を挙げるとしたほか、事前防災の重要性を改めて指摘する声も多く聞かれた。

E 全国測量設計業協会連合会は発災当日の1日に災害対策本部を設置した。建設コンサルタンツ協会も北陸支部が2日に災害対策現地本部を立ち上げ、11日には協会本部に災害対策本部を設置して本・支部挙げた支援活動を強化している。さらに建コン協と全国地質調査業協会連合会は国土交通省道路局の要請を受けて土木研究所、国土技術政策総合研究所との道路の本復旧に向けた専門調査にも技術者を派遣している。

D 昨年6月に策定が法制化された国土強靱化実施中期計画への期待も大きい。各会場に駆け付けた佐藤信秋参院議員は現行の加速化5か年対策の事業予算が国費ベースで8000億円余しか残っていないとした上で、早急に次期計画を策定する必要を強調するとともに、事業期間や事業規模については業界の意見や提案を広く聞き取りながらまとめていく考えを示していた。

E 建コン協関東支部で今後検討作業が本格化する「関東のインフラ整備構想」も注目される。関東全域のインフラ全般を対象にどういった議論が展開されるか、取材側もしっかり対応していきたい。

D ただ4mもの隆起など「数千年に1回程度の現象」ともいわれるような大規模地震への対策には限度もある。いまこの地域がどういう状況にあるのか、インフラ整備の進捗(しんちょく)状況に照らしながら被災リスクを常に把握し、情報をアップデートしていく。そうした防災DX(デジタルトランスフォーメーション)の実装も急務だ。

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