【BIM/CIM未来図DX】丹青社② 一品生産のBIMワークフロー確立/自分事にマインドセット | 建設通信新聞Digital

5月18日 土曜日

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【BIM/CIM未来図DX】丹青社② 一品生産のBIMワークフロー確立/自分事にマインドセット

 丹青社とBIMの出会いは、2016年にさかのぼる。外資系チェーンストアからの受注条件としてBIM導入を指定されたことが出発点となった。それまで2次元CADを使っていた同社ではBIMの研究を進めていたものの、実プロジェクトで導入したことはなかった。初案件で設計担当を務めた村井義史BIMデザイン局BIMマネージャーはオートデスクのBIMソフト『Revit』を初めて使い、試行錯誤しながらも業務を完結したことを思い出す。

 「このプロジェクトをきっかけに社内で私を含め3、4人がBIMに取り組み始めた。イメージを切り取り、それを図面化する2次元CADと違い、BIMは最初からイメージを形にしていく。設計の進め方はこれまでと異なり、当初は戸惑う部分もあったが、プロジェクトで実践しながら少しずつBIMの仲間を増やしてきた」と振り返る。

 外資系専門店やロードサイドフード店が中心だった同社のBIM事例が、オフィス、ショールーム、パブリックスペース、物販店、大型施設など他分野に広がり始めたのは、初導入プロジェクトの完成から4年後となる20年のことだ。BIM推進委員会の前身となる組織をデザインセンター内に発足し、成功体験の水平展開にかじを切った。

 内装・ディスプレー分野を主戦場とする同社の業務は、建築プロジェクトの内装部分などを担う「一品生産」領域と、チェーンストアに代表される「店舗展開」領域に大別される。デザインをパターン化でき、それをアレンジしながら設計を進められる店舗展開はBIMとの相性が良いが、一品生産の場合は用途が多岐にわたり、設計与条件もプロジェクトごとに異なるため、いかにBIMの流れを組み込むかが重要になる。

 高橋久弥執行役員デザインセンター長は「店舗展開のように共通項の多いデザインはBIMによって知見を蓄積できる。今後は一品生産案件にも柔軟に対応できるBIMワークフローの確立に力を注ぐ」と強調する。BIM推進委員会で成功体験の水平展開に注力するのも、事例を積み上げることで、より最適な枠組みを導き出すためだ。

イメージ共有で意思決定の迅速化が進む


 設計製図機械(ドラフター)を使った手書きによる設計からCADに移行する時代の波が到来したのは今からおよそ30年前。机にパソコン(CAD)とドラフターを置き、二つのツールを使い分けながら習得してきた。「当時は道具の変化だったが、BIMの導入は設計の考え方や枠組みから変えていく必要がある。テクニックより、むしろマインドセットが大切になる」と続ける。

 同社が中期経営計画でBIMを働き方改革の手段に位置付けるのも、社員一人ひとりに「自分事」としてBIMを活用することを重要視しているからだ。BIM戦略を指揮する森永倫夫取締役が「社内の成功体験を共有し、皆にBIMの良さを実感してもらうことが組織力につながる」というように、同社はボトムアップのBIM普及に力を注ぐ。

 21年から社内の活用事例を表彰する『BIM AWARD』を創設したのもその一環だ。エントリーした事例には合意形成の円滑化や業務の手戻り解消に加え、作業時間の短縮を実現する取り組みも多く、さまざまな成功体験が具体化してきた。森永氏は「好事例が社内の良い刺激になっている」と手応えを口にする。

導入分野は着実に拡大




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