【記者座談会】ドローン活用の実証進む/JIA日本建築大賞決まる | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【記者座談会】ドローン活用の実証進む/JIA日本建築大賞決まる

◇運用条件緩和で災害時など活用拡大に期待

A 施設の維持管理や災害時対応にドローンを導入する試みが増えている。

B 取材を担当している国土交通省中部地方整備局は管理ダムや砂防施設の巡視、点検への導入を検討している。2024年度は長時間飛行できる機体の採用テストを長島ダム(静岡県川根本町)と越美砂防施設(岐阜県揖斐川町)の2カ所で実施する予定だ。従来の定期点検は長期間となり、事故の危険も伴うので早期の実用化が期待されている。

C 同局管内の愛知県も、ドローンを含めた次世代モビリティーの社会実装に向けて、官民連携プロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」を推進している。30年度ごろを目標に、インフラ設備点検やデジタルマップを活用した被災地の情報収集などにドローンを使用する体制構築を目指している。

D プロジェクトに参画する名古屋鉄道は、1月31日に県から委託を受けて実証実験を行った。豊川市と新城市を流れる豊川上空でドローンを飛ばし、河川周辺の点検・巡視の効率化などを検証した。

A 効率的なドローン運用に向けて、国交省も無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領を改正し、レベル3.5飛行制度を新設した。運用条件が緩和され、これからの活用の幅は一層広がりそうだ。

D 特に災害時での活用を期待したい。車両移動が困難な場所でも、ドローンなら物資輸送や現地調査が可能だ。能登半島地震の被災地でもドローンを活用した現地調査が行われ、有効性を確認したと聞く。

C だが、本格導入への課題もある。人材育成を含め腰を据えた取り組みが求められるだろう。

◇人とつながる“生き生きとした建築”を評価

A 話は変わるけど、23年度のJIA日本建築大賞が山崎健太郎氏の共生型デイサービスセンター『52間の縁側』に決まった。評価のポイントはどこにあっただろうか。

52間の縁側内観(撮影・黒住直臣)


E 介護する人と介護される高齢者の間で完結するのではなく、施設をより良い居場所にしていこうという行動やプロセスの“建築”の枠を超えた広がりまでデザインしたことが、審査員の共感を集めた。
G 施設は、子育て世帯の自主保育を受け入れるなど、子どもの遊び場としての顔も持つ。介護を受ける高齢者が子どもを見守り、子どもやその家族が高齢者を見守る相互関係が施設を中心に実現している点が特徴だ。

F 施設の根底には、高齢者の「その人らしい暮らし」を尊重する事業主の考え方があり、危険を排除するための管理に重点を置くのではなく、地域の人がお年寄りを見守る開かれた施設を目指した。地元の人も巻き込みながら、クライアントの理念を具現化した建築家としての手腕も高く評価されていた。

E 優秀賞に選ばれた『春日台センターセンター』も、利用者が施設に愛着を持ち、周辺地域も含めた居場所をより良くするための仕組みを描いた点で似ている。両作品に甲乙をつけることには審査員も苦慮していたが、「みんなが手を出しながら、建築を引き継ぎ、残していきたいと思われるような強さ」を、どちらにより感じたかが一つの決め手だったようだ。

F 審査委員長の松岡拓公雄氏が総評で語ったように、美しいものや快適なものをつくることは当然の職能として、人とのつながりを感じられる“生き生きとした建築”が、現在の社会では、より強く求められていると感じた審査会だった。

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