【BIM2024①】対談・国土交通省住宅局長 石坂聡氏×神戸芸術工科大学学長建築BIM推進会議委員長 松村秀一氏 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM2024①】対談・国土交通省住宅局長 石坂聡氏×神戸芸術工科大学学長建築BIM推進会議委員長 松村秀一氏

 国土交通省は、2025年度の建築確対談・25年度からBIM図面審査を開始/BIM本格化へスタート地点/ストック社会でのデータ活用に期待認申請における「BIM図面審査」の開始に向けた取り組みを加速している。建築BIMの普及と業務効率化に向けた“アクセル”にするとともに、ストック型社会における建築データの活用につなげる考えだ。多数の建築関連団体が参加する建築BIM推進会議のタスクフォースを中心に図面審査の検討が大詰めを迎えている。松村秀一建築BIM推進会議委員長と石坂聡国土交通省住宅局長が対談し、建築確認のBIM化の意義や建設産業の今後を展望した。
25年度からBIM図面審査を開始/BIM本格化へスタート地点/ストック社会でのデータ活用に期待

石坂氏

――建築BIM標準化に向けた現在の状況は

 松村 10年前のBIMのイメージは、設計や施工、確認審査を含め、建物をつくるための各段階で3次元データを活用し、合理化するプラットフォームの印象が強かったと思います。最近の推進会議の議論やメンバー間の話し合いを聞くと、従来の合理化に加え、建築ストックのデータ活用が重要になってきました。
 ストック型社会の現代において、建築の正確な情報を簡単につかめるデータはまだ世の中にありません。その意味で建物のBIMデータが増えると都市や不動産のDXと連携し、ストックデータの活用が大きく進むと思います。BIMがビジネスチャンスを広げる土台になるという認識を多くの人が持ち始めているのではないでしょうか。
 石坂 BIMの普及が進んできた背景には、コンピューターのデータを扱う量や計算速度の飛躍的な向上があり、現在までいろいろな技術が格段に進歩しました。画像が動画になり、現在では仮想空間で疑似体験することもできます。BIMのような3次元データを参照しながらコミュニケーションすることが主流となる時代になったと思います。
 建築の実務にBIMを活用することで効率化が進みますが、単に手間を省けるとか便利になる以上に、部材の仕様などがBIMに組み込まれるため、ストック型社会の現代においてはBIMを設計・施工から維持管理・運用につないでいくことが重要になると思います。
 例えば、マンションの大規模修繕でもBIMがあれば部材や工法の違いまで詳細なデータを取得し、最適な修繕の方法を検討できるかもしれません。建築のデータが爆発的に増えるため、BIMを使う新たなビジネスモデルが増えることが予想されます。

松村氏

――ストックでの需要が高まる中、建築確認をBIM化する意義は

 石坂 生産年齢人口が減少し、担い手不足が深刻化する中、建築に携わる業務変革が求められます。設計、施工にBIMなどの新技術を活用し、圧倒的な生産性向上を実現しなければなりません。
 その前段階として25年度のBIM図面審査があり、BIMから切り出した2次元図面を審査します。
 28年度以降にBIMモデルを活用したデータ審査にステップアップする予定です。こうした取り組みをBIM普及のアクセルにしなければなりません。

 松村 世界中で学生がBIMソフトを普通に使うようになり、もうBIMは特殊なものという時代ではなくなりました。やや遅れた感はありますが、日本でもBIMを教える大学が増え、自発的にBIMを使う学生もたくさんいます。
 設計事務所やゼネコンでもBIMを使う人が増えましたが、みんなが情報共有する段階にいくには「誰かが使っている」という中途半端の活用ではダメで、全員が等しく使えなければなりません。そうすることで生産性が飛躍的に向上します。BIMで図面を作る流れができつつある今、建築確認のBIM化は実務面でも大きなポイントです。

――建築確認BIM化の検討状況は

 松村 推進会議では、ライブラリ、建築確認、積算、情報共有など複数の部会で標準化を検討していましたが、23年度に建築確認のBIM化をターゲットにした「審査タスクフォース」「標準化タスクフォース」という二つの部会横断組織を作りました。
 25年度のBIM図面審査開始という共通目標に向けて各部会の取り組みが収斂され、相互理解が進んでいます。期限内にスタートするため、今年度が勝負どころとなります。

 石坂 将来のBIMデータ審査では、審査に必要な情報が自動表示されるため大幅な効率化が期待できます。情報通信技術やソフトが急速に進化しており、法適合を自己チェックするソフトができてもなんら不思議ではありません。10年後には審査そのものを必要としないレベルに進化する可能性もあります。その意味で25年度のBIM図面審査はスタート地点であり、乗り越えなければならないものだと考えます。

――BIM化を見据えた人材教育の在り方は

 松村 4月に赴任した神戸芸術工科大学は、アニメ、ゲームデザイン、映像などの3D技術を駆使したクリエーティブな分野が学生に圧倒的な人気です。どちらかというと建築はデッサンなどアナログ志向が強いですが、入口段階でクリエーティブな若者の流出を防ぐためにもBIM教育の一般化が重要です。
 米国のコロンビア大学では1990年代に3次元設計の教育に着手しました。新しい建築手法を学んだ卒業生がハリウッドに就職し、映画の画像処理技術を支えているそうです。
 空間表現は建築を学んだ人の得意分野のためデジタルの知見と合わせることで新たな領域を開拓しました。こうした出口戦略の拡大も重要です。

――今後の展望は

 石坂 2年目の建築BIM加速化事業では、中小プロジェクトに補助対象を広げています。そして、25年度のBIM図面審査はBIM本格化に向けたスタート地点です。BIMの可能性がさらに広がることを期待します。

 松村 推進会議の5、6年に及ぶ活動を通じ十分な土台を築いてきました。建設業界の方々に、安心してBIMによる確認申請に取り組んでいただきたいと思います。



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