◇新4K実現へ“危険”の汚名返上は絶対条件
A 1日から全国安全週間の準備期間が始まった。
B 最近は安全大会の取材が重なり大忙しだ。コロナ禍が明けてから対面方式での開催も増え、1日に数件、安全大会の取材に追われる日も珍しくない。
C この準備期間に安全大会や安全パトロールの開催などを通じて、7月1日から7日までの全国安全週間の実効を上げないといけないからね。
D 建設業の場合、現場で危険と隣り合わせの一面もあるため、こうした期間を契機に、改めて労災の悲惨や安全の重要性を見つめ直し、安全文化を醸成していくことが欠かせない。最近、建設業での労災件数は減少傾向にも見えるが、死亡災害が他産業より多い状況には変わりない。
C それは厚労省が5月27日に公表した、2023年(1-12月)の労働災害の発生状況からも明白だ。建設業での死亡者数は3年ぶりに減少し、休業4日以上の死傷者数は2年連続で減少している。ともに過去最少となったとはいえ、死亡者数が全産業の約3割を占めている状況は依然、変わらないからね。
B 最近は人手不足から、建設現場で働く外国人技能労働者が増えていると、ある協会の会長から聞いた。安全に対する文化の違い、言葉の認識などの問題もあって、外国人労働者の労働災害の増加は悩みの種だと嘆いていた。
D 建設業が3K(きつい・汚い・危険)と揶揄(やゆ)されてきたのも、こうした状況が背景にある。それを脱却するため、官民を挙げて新3K(給与・休暇・希望)、それに「かっこいい」を加えた“新4K”の建設業界を目指している。これを実現するためにも、「危険な産業」の汚名返上が絶対条件となる。死亡災害は家族の人生まで変えてしまい、何より命は帰ってこない。どうか皆さん、今後もご安全に!
◇日本の建設技術活用へ実証・実用段階に
A 話は変わるが、中国の無人月面探査機が月の裏側で岩石などのサンプルを採取し、月面を離陸したと中国国営メディアが発表した。地球まで運ぶことができれば世界初の快挙という。月面開発は世界中がしのぎを削っているが、日本の状況はどうだろう。
E 日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、月面から天体観測を行う「月面天文台」を設置する方針を示している。早ければ28年度から試験的な観測を始め、地球では観測が難しい周波数の電波を検出し、宇宙誕生初期の謎に迫るそうだ。
F 月面開発では建設企業も技術革新に取り組んでいる。例えば高砂熱学工業が開発してきた小型の「月面用水電解装置フライトモデル」が完成した。宇宙スタートアップ(新興企業)のispaceの無人月着陸船に搭載し、これらを載せたスペースX社のロケットが今年の冬にも月面に向けて打ち上げられる。着陸後、月面での水素・酸素生成の実証に取り組む予定だ。月で水素と酸素が生成できれば、水素は燃料利用、酸素は人の呼吸に使えるため、人の長期滞在や生活が可能となり、月面経済圏形成に向けて大きな前進となる。
E 国土交通省が21年度から文科省と連携して取り組んでいる宇宙無人建設革新技術開発推進事業(宇宙建設革新プロジェクト)も4年目となる。月面基地建設など宇宙での利用が見込まれ、かつ地上建設技術の高度化に貢献する技術を開発する取り組みで、25年度にはいよいよ実証・実用化の段階に入る。30年ごろに始まる見通しの月面無人拠点建設への技術活用を見据えて官民一体での取り組みもいよいよ佳境を迎える。
B 月面開発は遠い未来の話ではなく、もう近くまで迫っている。日本の建設技術が月面で活躍するなんてワクワクするね。