【現場閉所の効用】リフレッシュは目に見えない"作業効率"! 大林組の新名神高速道路水沢北工事事務所 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【現場閉所の効用】リフレッシュは目に見えない“作業効率”! 大林組の新名神高速道路水沢北工事事務所

大林組の野上所長(中央)、宮本組の東氏(右)と佐藤氏(左)

 「現場が閉所できれば、みんなが安心して休める」と、大林組が三重県内で施工する新名神高速道路水沢北工事事務所の野上啓泰所長は実感を込めて話す。2016年4月から現場の4週6閉所をスタートし、現場職員については4週8休のローテーションを組むが、現場が稼働している日に休むことに「つい現場のことが気になってしまう。心のゆとりを得るには閉所が理想」と考えている。 現場は18年度開通を目指す新名神高速道路事業の四日市JCTと亀山西JCT間の長さ27.8㎞のうち、四日市市と鈴鹿市にまたがる掘割土工と橋梁下部工の2区間で構成する長さ560m。既に進捗率は8割に達するが、追加工事となった調整池や本線橋台など大がかりな作業が残っており、野上所長は「まだまだ常に気が抜けない」と手綱を締める。
 隣接工事の土砂運搬が現場内を通過することもあり、現場打ちで計画していた溝渠工をプレキャストボックスカルバートに変更するなど生産性向上への取り組みを積極的に進めてきた。プレキャストの採用により、現場打ちに比べ作業員の投入人数は4分の1に減らせる。作業時間の短縮に加え、安全面の効果も期待できる。トータルコストはアップするが、隣接工事との関係性など全体最適の観点から、発注者が理解を示してくれたことは大きかった。

溝渠工をプレキャストに変更することで大幅な生産性向上を実現

 17年度から土木工事の全現場で現場職員の4週8休に取り組む同社では、名古屋支店が先行する形で全現場を対象に4週6閉所もしくは8閉所の取り組みをスタートさせた。天候に左右されにくいトンネル工事などは工程の組み直しによって閉所の設定が比較的実現しやすいが、この現場のような明かり工事では予備日をある程度確保した対応が求められる。
 「6閉所は完璧に達成している」と、野上所長は手応えを口にする。6閉所を始めて1年5カ月が経過し、現場の意識も変わった。「休む意識が芽生え、リフレッシュできることが目に見えない作業効率となっている。交代しながら4週8休に取り組む現場職員の引き継ぎも手慣れてきている」。月末に工程を踏まえながら翌月の閉所日を決め、現場職員と調整しながら4週8休の割り振りを組む。当初の休み前日は細かく引き継ぎ事項を伝えるため、職員の残業が目立っていたが、いまでは、電子メールで引き継ぎ内容を示すだけでスムーズに休めるようになった。「チームプレーの意識が浸透してきた証し」と胸を張る。
 協力会社も前向きだ。「6閉所には正直驚き、当初は土曜に休むことに違和感があったが、休み明けには気持ちを新たにできている」とは、1次下請けとして参加する宮本組(兵庫県姫路市)の東竜三工事部所長。社内は4週6休だが、工事担当は配属現場の状況に合わせている。「最初のころは土曜休みに何をしていいか分からず、現場の書類整理などしていた。いまでは有意義な休日の過ごし方ができている」と佐藤隆史工事部部長も力を込める。

現場北側の掘割土工区間

 野上所長は6閉所のスタート時に職長を集め、魅力ある現場づくりに向けた休日確保の意義を説明した。「月2回の土曜閉所日が設定されることに不安を感じる職長もいると思うが、習慣として休むことが当たり前になってくれば、そこを前提に現場の創意工夫も生まれるはずだ」。現場作業員へのヒアリングでは月2回の土曜閉所日にしっかりと休みを取れている技能者がいる一方で、2日間とも別の現場に出向いた技能者もいた。ある程度の年収を確保する熟練技能者は休む傾向があるほか、法面工など特殊技能をもつ職人は別の現場にかり出されるケースも少なくない。
 日本建設業連合会の音頭で現場の週休2日実現に向けた動きが加盟企業を中心に広がりを見せる中、現場の事情に合わせた休みの取り方の重要性を、野上所長は強く訴える。「繁忙期は休めなくても一段落した時にまとめて休む。現場の実情を見ながら1年、半年タームのトータル休暇日数で考えることも必要だ。技能者の収入確保には協力会社と厳しい条件で契約をしないよう余裕を持って契約すべきだろう。最初から4週6閉所や8閉所を条件とした協力会社との契約も1つのやり方だ」。工事完了の18年5月まで残り9カ月余り。次の目標として「4週7閉所を目指したい」と先を見据えている。

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